「3時間」かかっていた棚卸が
わずか「30秒」に!

 iPadを導入するまで、ダスキン事業部のルートセールス担当者は、複写タイプの納品伝票を持って営業先に出かけていました。
 そして、1日の営業活動を終えたら営業所に戻り、納品伝票に記入した内容をもとに、データを打ち込む精算作業が待っていました。

 さらに月末には棚卸が加わるので、仕事が終わる頃には、深夜0時を回っていることもあった。そこで、これらの作業の手間を減らすために、iPadで精算できるシステムを運用しています。

 当時、このシステムの開発に携わった水野和隆課長は、「現場の声を反映させ、年配の人でも使いやすいシステムづくりに注力した」と話しています。

「納品伝票を使わずに、iPadへデータを打ち込むだけで精算できれば、営業所に戻ってから精算する必要はありません。営業先で入力すればいいので、時間の短縮になります。
 また、担当者がiPadに入力したデータは、月末の棚卸とも連動させています。
 iPadを使う前は、棚卸に3時間以上かかっていました。
実際に現物の数を数える必要があったからです。
 でも現在は、入力されたデータを確認するだけなので、30秒もあれば終わります。
 さらに、売上数字はリアルタイムで集計されるので、店長は売上情報をいつでもどこでも確認できます」(水野)

 ダスキン事業部だけでなく、経営サポート事業部も、iPadによる業務改善が進んでいます。

 かつての経営サポート事業部は、セミナーの進行、来場者、備品などを紙のチェックシートを使って確認していました。

 しかし今は、クラウド上にある「電子化されたチェックシート」を利用しています。
 これにより、セミナー会場の離れた場所にいても、すべての社員がリアルタイムで、情報を共有できます。

 連絡事項なども、その場でiPadに入力すれば、ただちにクラウド上で共有されます。
 最近では、参加証にバーコードを記載し、iPadで読み込むと、宿泊・懇親会の確認と過去の参加履歴がリアルタイムでわかります。

 パートの中には、「iPadをみんなが持つようになって、コミュニケーションがよくなった」と感じている人もいます。
 ガラケーしか使ったことがないパートが、iPadを支給されたことでLINEを使うようになり、「みんなの仲間に入れてもらった」と喜んでいました。

 iPadは、業務の効率化のみならず、従業員同士のコミュニケーションツールとしても大きな威力を発揮しています。
 ライバル会社は、いまだに「竹やり」で戦争をしています。
 しかしわが社は、全従業員が「空中戦」を仕掛けている。「竹やり」と「空中戦」では、どっちが強いでしょうか。

 結果は、火を見るよりも明らかです。
 ※誰かが万一iPadを紛失した場合は、ただちに初期化するソフトが入っているので、情報漏えいなどの心配はありません。

小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/