加齢黄斑変性ではどんな症状が起こる?

 網膜の中心にあり、ものを見る要の役割を担う黄斑に異常が起こると、視野の中心にさまざまな視力異常が表れる。

 例えば、視野の中心が波打つようにぐにゃりと歪んで見える「変視症」だ。黄斑が障害されることで中心部分のみが歪んで見えるが、周辺部は障害されず正常であるため、視野の周辺部は歪みなく見えるのが特徴だ。

(引用元:2点ともノバルティス ファーマの加齢黄斑ドットコム)

 視野の中心のみが暗くなる「中心暗点」という症状もある。滲出型の加齢黄斑変性で出血が起きている場合などに表れやすく、視野の周辺部は正常に見えるものの、中心が黒く塗りつぶされて視野が遮られるように感じる。視野の中心という、一番見たい部分が見えなくなるため、本や新聞の文字を読んだり、パソコンやスマホを操作するなど、視野の中心にフォーカスする作業が著しく困難になる。

 さらに症状が進行すると、ものの色が分からなくなる「色覚異状」を生じることもある。これは、赤や青など特定の色が見えにくくなるのではなく、すべての色の判別ができなくなる症状だ。

 加齢黄斑変性では視力自体の低下も進み、治療をしなければ失明に至るが、早期発見ができれば対応策はある。しかし、変視症や中心暗点の症状が表れているにも関わらず、眼科への受診が遅れるケースも少なくないという。その理由が、私たちが両目でものを見ていることにある。

 「加齢黄斑変性は通常、まず片目に発症します。すると、異変が起きていない方の目が、視野中心の歪みや暗点を補ってしまうのです。視野の明らかな異常を自覚したときには、病状がかなり進行しているというケースも少なくありません。特に進行のスピードが速く日本人に多い滲出型の場合、半年程度でかなりの視力低下が起きてしまうこともあります。正常な状態ならば視野の中央が歪んだり暗くなったりすることはないため、わずかでも視力の異常に気付いたら、放置は厳禁です」(五味教授)

 異常が起きていない方の目で視野が補われてしまうとしたら、早い段階で自己チェックすることは不可能なのだろうか。

 「定期的に眼科を受診することが最善ですが、自己チェックをする方法はあります。たとえば、パソコンでエクセルの作業をするときに、表を表示して片目ずつで見てみることです。自然の風景などでは中心の歪みや暗さに気づきにくいこともありますが、碁盤のようなマス目を用いれば異常をチェックしやすくなります。エクセルを使わない人は、原稿用紙やマス目で区切られたカレンダーなどを活用するのもいいでしょう」(五味教授)

加齢黄斑変性の自己チェックシート(アムスラーチャート)。約30センチ離れて眼鏡はかけたまま、必ず片目を閉じて表の中央の黒い点を見つめる(引用元:ノバルティス ファーマの加齢黄斑ドットコム)

 ポイントは、片目ずつ見ること。気づいたときにこれらを活用した自己チェックを行えば、早期発見につながるかもしれない。