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焦点:日米カジノ王同士の訴訟、FBIへの情報提供でも火花

2017年1月13日

[11日 ロイター] - 米カジノ大手ウィン・リゾーツ<WYNN.O>のスティーブ・ウィン氏とユニバーサルエンターテインメント<6425.T>の岡田和生氏が争っている米ネバダ州の訴訟に提出された宣誓供述書の中で、ウィン社側が岡田氏側の当時の幹部に旅費などを提供、岡田氏の贈賄容疑について米連邦捜査局(FBI)に情報提供するよう取り計らっていたことが明らかになった。

この宣誓供述書は2015年4月に、当時ユニバーサル財務経理部副部長だった藤原孝高氏が提出した。ロイターが確認した内容によると、ウィン社のセキュリティー担当者が日本で藤原氏と面会、米国に行って岡田氏の贈賄容疑を追及している米連邦捜査局(FBI)に話をするよう求めたという。

藤原氏は2度にわたりカリフォルニアでFBIと面会したと供述。ウィン社側は、同氏が米国に行く際のビジネスクラスの飛行機代、宿泊代、食事代などの費用を負担し、さまざまな手配を行ったことだけでなく、同氏以外の複数のユニバーサル社の現・元従業員にもFBIへの情報提供を働き掛けたことを認めている。

<異例の協力依頼に論議>

こうした訴訟で、一方の当事者企業が、相手方企業の幹部に別の刑事捜査への協力を依頼し、そのための旅費を負担するなどの例はあまりない。

同裁判を担当する判事は、ユニバーサル側弁護士からの申し立てに対し、ウィン側の担当者の行為は不法ではないとの判断を示す一方、こうしたウィン側の動きについて質問することは許可した。その結果、同裁判は海外の贈賄事件に対する米当局の捜査活動や企業が訴訟相手の刑事捜査に果たす役割なども論議する異例の展開を見せている。

これまでロイターが報じたように、FBIは2012年から、岡田氏関連企業がマニラの仲介者に行った4000万ドルの支払いについて捜査している。その資金が、フィリピンでの24億ドル規模のカジノ事業に対する税制優遇の獲得を狙ったものかどうかが焦点だ。米国で事業を行う企業が外国の政府高官に賄賂を支払えば、「海外汚職行為防止法(FCPA)」に抵触し、犯罪となる。

岡田氏は不適切な支払いを否定しており、刑事訴追はされていない。藤原氏はその後ユニバーサルを退社したまま連絡がとれず、ユニバーサルは、ロイターからのコメント要請や岡田氏へのインタビュー依頼に応じていない。

<FBIとの接触を仲介>

ウィン氏と岡田氏が争っている民事訴訟は、2人のカジノ王の関係悪化に端を発する。2012年にウィン社が岡田氏を同社役員から解任した。同社は岡田氏が10万ドル以上をフィリピン政府高官への接待やギフトに使ったとし、役員の義務に違反したと主張。岡田氏は不正な支払いではなく、解任される根拠がないと反論している。

岡田氏に対する贈賄容疑の刑事捜査が始まったのは、ウィン社がその民事訴訟を起こした後だった。

ウィン社のセキュリティー担当者のジェームズ・スターン氏が法廷に提出した文書によると、同氏は2011年終り頃に接触した岡田氏の元部下の情報から、幅広い犯罪行為が行われた可能性があるとの結論に達し、2012年3月頃、その情報をラスベガスのFBI捜査担当に提供したという。

スターン氏は元FBI職員で、東京に駐在したこともあり、日本語も話す。同氏は文書のなかで、2012年11月、東京のANAインターコンチネンタルホテルの部屋で初めて藤原氏と会ったと述べている。

スターン氏は藤原氏に、ウィン社と自身が米政府の犯罪捜査に協力していることを説明し、FBI捜査官に会って話すよう依頼、藤原氏は同意したという。スターン氏はその後、藤原氏と、岡田氏の元部下である小坂敏彦氏の2人がサンフランシスコでFBIと会うよう手はずを整えた。小坂氏はロイターがコメントを求めても応じなかった。

2007年にウィン社に入社するまで、スターン氏はFBIアジア組織犯罪捜査部門のトップを務めており、日本の警察にも知り合いがいる。同氏は、岡田氏の現在および元部下11人をFBIに会わせた。ロサンゼルス、ハワイ、グアムなどへの旅行のアレンジもすべて行った。裁判の資料から、ウィン社はこれらに10万ドル以上を費やしたことが明らかになっている。

<法的なグレーゾーン>

法律専門家によると、米当局による海外での贈賄捜査は言葉の壁があり困難なことが多い。コストもかさむ。その結果、当局側は捜査に関して、FCPAの適用対象となる企業が自社の行為について報告する内容に頼らざるを得ない。一般に、そうした協力が得られるのは、その企業自体が犯罪の被害者である場合や従業員が不正行為を犯した場合が多いという。

しかし、FBIが今回のような形で企業と協力して捜査にあたる例は聞いたことがないと、法律学の教授やFCPAの元検察官らは話す。

バージニア・コモンウェルス大学のジェイ・アルバニーズ教授は、証人になり得る人物をFBIに紹介して旅費まで出すというのは、法的なグレーゾーンに入る行為で、FCPA違反による裁判では前例がないと指摘。「外国人の証人を、面談が必要な際に米国に連れてくる方法に倫理的な境界線があるのは明らかだ。ただ、法律的には明確ではない」と語る。

裁判資料の中で、ウィン社側はスターン氏について、仲介役であってFBIとの面談には参加していないとする一方、調査を手助けする際に払った旅費は政府の指針に沿っていると述べている。さらに、会社がライバル社に対する政府の調査に協力することを合法と認めた過去の判例を挙げている。

以前にFCPA調査を監督する連邦検事を務め、現在は法律事務所シェルマン&スターリングに所属するフィリップ・ウロフスキー氏は、ウィン社と捜査当局との協力関係は確かに異例だが、必ずしも不適切ではないと指摘。「戦略的ではあるが、悪いこととは言えない」と話す。

裁判資料によると、岡田氏の法律チームはスターン氏とFBIの動きについて、民事訴訟で岡田氏の信頼を傷つけることを狙った「企業の謀略」を示すものだと主張。岡田氏の弁護士スティーブン・ピーク氏は2015年12月の法廷審問で、「ウィン・リゾーツが連邦刑事捜査をあおり、進めさせたことを今年になって知った」と述べている。

一方、ウィン社側弁護士はこうした「謀略行為」との訴えを否定。ウィン広報のマイケル・ウィーバー氏は、関連する情報を法律執行当局に報告するのは法律と規則に則った行動だと反論している。

この民事訴訟は、早ければ今年にも陪審の判断が示される可能性がある。

<不適切ではないが疑問の余地>

同裁判の証人になり得る人物に接触したスターン氏の行為について、判事を務めるネバダ州クラークカウンティ地方裁判所のエリザベス・ゴンザレス氏は、不適切との訴えを却下している。同氏の行動は、民事訴訟で「証拠開示手続き(ディスカバリー)」と呼ばれる証拠収集手段を規定したルールを犯していないという。

しかし、同判事は2015年6月の審問で疑問の余地も残した。企業が不正行為によって自らが損害を受けていると考えられる場合でも、刑事捜査にこれほど積極的に協力するというケースは聞いたことがないと述べている。

 「被害者が政府の調査を助けるのはよくある話だが、被害者が捜査を受けている側の人たちの旅費や宿泊費まで負担するというのは聞いたことがない。不適切とは言わないが、彼らによる情報収集は許可する」と述べた。スターン氏は同判事から、この民事裁判において追加の証言を求められている。

※英文参照番号[nL1N1F111X](契約の内容によっては英文がご覧いただけない場合もあります)

(Nathan Layne記者 翻訳:加藤京子 編集:北松克朗、江本恵美)

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