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象牙規制(上):守勢に回る日本政府、国際批判の矛先集中

2017年1月17日

[東京 17日 ロイター] - 日本の象牙取引が国際的な非難の矢面に立たされている。野生生物保護団体は日本政府が取引を容認していることが、ゾウの密猟を誘発していると批判。その矛先はオークションで取引の場を提供しているヤフー<4689.T>にも向かっている。

日本政府は規制強化に乗り出したが、象牙市場の年内閉鎖を打ち出した中国とは対応に隔たりがあり、対日非難が静まるかは、なお不透明だ。

<中国象牙禁止で日本孤立イメージ>

象牙取引をめぐる国際世論の中で日本が窮地に陥っている背景には、密輸大国と非難されてきた中国の「転向」がある。「全形の象牙の在庫を多く保有しているのは日本と中国だけ」(NGO関係者)という状況が続く中、中国はさらに一歩進め、昨年12月30日、今年末までに商業目的の象牙の取引を全面禁止すると発表した。

中国はこれまで禁止の方針だけを示していたが、実施時期を明確にしたことで、残る問題国は日本だけという見方が広がりかねない情勢になってきた。

 「象牙はクジラほど政治のサポートがない」──。象牙問題に関わるある関係者はこうぼやいた。水産庁が国際対応を取り仕切る捕鯨問題と異なり、象牙問題は環境省、経済産業省が責任を押し付け合い、それが日本の主張が国際社会に届きにくい要因のひとつになっているとの見方も少なくない。

関係者によると、こうした状況に危機感を持った外務省は昨年、ヤフーに接触。ヤフーは昨年3月に世耕弘成内閣官房副長官(当時)に官民協議会の設立を持ちかけ、ようやく国を挙げての体制構築にこぎつけた。初会合が開かれたのは、象牙の国内取引禁止勧告が決議された第17回ワシントン条約締約国会議(COP17)のわずか4カ月前のことだ。

<象牙の国際取引は原則禁止>

ワシントン条約では、種の絶滅を防ぐために取引に制限が必要な野生動植物を3区分に分類し、レベルに応じた規制をかけている。附属書Iは絶滅のおそれがあり、その原因は国際取引にあると判断されている種で、国際取引は原則禁止。附属書IIは必ずしも絶滅の恐れはないものの、取引規制をしなければ絶滅のおそれがある種で、一定の条件を満たし輸出国が許可すれば取引はできる。

では、アフリカゾウはどこに区分されているのか。アフリカゾウは1980年代に密猟が激化したため、1989年に附属書Iに掲載され、翌1990年から象牙の国際間取引は原則禁止となった。その後、1997年にボツワナ、ナミビア、ジンバブエの南部アフリカ3カ国、2000年には南アフリカ共和国が附属書IIに戻されたが、他の国のゾウに影響を与えかねないとして取引を制限する「注釈」がつき、現在も実質的に取引ができない状況になっている。

その後、南部アフリカ諸国の強い要望もあり、1999年と2009年に2回だけ自然死や有害駆除されたアフリカゾウの象牙の輸出入が認められたが、これ以外で国際取引は行われていない。つまり、日本政府の主張が正しいとするならば、現在、日本に流通している象牙は1989年以前に輸入されたものか、その後の2回で輸入されたものということになる。

<甘い在庫管理、「床の間象牙」把握できず>

日本がワシントン条約の締約国になってから象牙の国際取引が禁止されるまでの間(1981年から1989年)に合法的に輸入した象牙は約2006トン。さらにその後の2回の輸入で89トンが入ってきており、合法的に輸入された象牙は約2095トンにのぼる。

合法的に輸入されたと言っても、すべてが自由に売買できるわけではない。象牙は「種の保存法」による規制の対象となっており、全形については、あらかじめ登録を受けたものだけが国内取引ができる。全形ではない象牙製品やカットピースも届出業者だけが取り扱い可能だ。

ただ、この登録制度が甘いため野生生物保護団体などからたたかれる原因にもなっている。

 「日本政府が在庫を把握できていないことは非常に問題だ」──。野生生物の取引を監視・調査する英国に本部を置く非政府組織(NGO)「トラフィック」の若尾慶子ジャパンオフィス代表はこう語り、管理体制の強化を訴えた。

約2095トンのうち、登録制度が導入された1995年から2015年までに登録された全形象牙は累計305トン。では残りの約1790トンはどこに消えたのか。一部は印鑑などに化けた可能性が高いが、いまだ登録されないまま押入れの奥に眠っていたり、床の間に飾られていたりするケースも多いという。

一部の野生生物保護団体は象牙の登録本数が年々増加していることから、この中に密輸された象牙が紛れ込んでいる可能性が高いと批判。これに対して、日本政府はこれまで表に出てこなかった「床の間象牙」が相続等で表に出てきているにすぎないと反論している。

環境省の担当者は「床の間象牙や押入れ象牙がどの程度あるかわからない。そこがわれわれが批判されるときに残念ながら弱いところだ」と認めている。

あるNGO関係者は「在庫管理に不備があるから、それが合法的なものなのか、密輸されたものなのかでもめる。政府も合法的と主張するだけでなく、管理を強化するとともに、抜き打ちで象牙の年代鑑定をするなどして疑惑を晴らす努力をする必要がある」と話す。

官民協議会が昨年9月にまとめた報告書によると、税関が象牙と象牙製品を差し止めた件数は年間数件程度にとどまっており、その大半が禁止を知らずにお土産として持ち込んでしまった「うっかり輸入」という。こうした状況を踏まえ、報告書は「大規模な密輸入は確認されていない」と結論付けている。

関係者によると、環境省は20日召集の通常国会に、現在、届出制の象牙取り扱い業者を登録制にすることなどを盛り込んだ「種の保存法」改正案を提出、監視の強化を図る方針だ。野生生物保護団体は「一歩前進」と評価するが、求めているレベルには程遠く、引き続き規制強化を求められそうだ。

*カテゴリーを修正しました。

(志田義寧 編集:北松克朗)

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