1月17日、メイ英首相がEU離脱に際して単一市場から脱退する方針を表明したことを受け、英金融サービス業界は一部事業の海外移転を加速させる見込みだ。ロンドンの新金融街カナリー・ワーフで昨年12月撮影(2017年 ロイター/Andrew Winning)

[ロンドン 17日 ロイター] - 英国のメイ首相が17日の演説で欧州連合(EU)離脱に際して単一市場から脱退する方針を表明したことを受け、英金融サービス業界は一部事業の海外移転を加速させる見込みだ。

 各金融機関は事業拠点を見直す前に英政府がEUとの関係をどうするのかはっきりしほしいと訴え続けてきたが、現段階ではもうほとんどの大手が引き続きEU域内で活動できるようにするため、一部事業を英国から移す態勢を整えている。

 そうなると今後は、金融センターとしてのロンドンの将来性が大きな問題の1つになる。なぜなら金融は英国最大の輸出産業であり、最も多くの法人税収をもたらしれくれるからだ。

 メイ氏の演説を受け、ある国際的な大手行の幹部は「最悪シナリオが現在は基本シナリオになったように見受けられる」と語り、各金融機関は緊急対応計画(コンティンジェンシー・プラン)の取りまとめをさらに急ぐだろうと付け加えた。

 メイ氏は、世界経済フォーラムが開催されているダボスで19日にゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファイン最高経営責任者(CEO)やJPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOといった大手行首脳と会談する予定。

 ただ英国の単一市場撤退がほぼ確実となり、金融機関はロンドンを拠点にEU域内すべてで活動できる「パスポートの権利」も失われる事態となった以上、その場でメイ氏が英国から一部事業を動かさないでほしいと訴えても、銀行首脳らを説得するのは難しい。

 コンサルティング企業オリバー・ワイマンは昨年10月、英国の金融機関がパスポートの権利を喪失すれば、雇用が7万5000人減少し、英政府は最大100億ポンドの税収減に見舞われると警告した。

 米大手5行はロンドンで計4万人を雇用しており、これはその他の欧州全体の雇用数を上回っている。

 金融業界は英政府に対して、EU離脱交渉で好条件での合意が難しいことが判明したり、交渉期間が定められた2年を超えて長期化するような事態に備え、新たな段階への準備を進めるための移行期間をきっちり確保してほしいとも要望している。

 メイ氏は今回、移行期間が設定できると強く確信していると初めて示唆。「われわれは新しい取り決めが段階的に実行されると考えている。その過程で英国とEU機関、加盟国は態勢を整えることが相互の利益になるだろう」と語った。

 しかしメイ氏は、そうした移行期間がどう機能するのか、あるいはいつまで続くのか詳細には触れていない。金融セクターの法律専門家は、内容がはっきりしないことから移行期間が設けられるのを当てにするのは賢明ではないと助言している。

 法律事務所バーウィン・レイトン・ペズナーのパートナー、ポーリー・ジェームズ氏は「英政府が移行期間を実現してくれる状況を金融機関が頼みにしていたら、実際には適切なタイミングで交渉をまとめられなくなる展開を真剣に懸念している」と話した。

 その上でジェームズ氏は「だからわれわれは金融機関の顧客に対して、英国のEU離脱後も単一市場へのアクセスを確実に保つために、コンティンジェンシー・プランを練るよう提言し続けている」と説明した。

(Anjuli Davies、Andrew MacAskill記者)