ポスト自動車として
期待される航空機産業

  わが国の航空機産業が全産業に占める割合は非常に小さく、自動車産業の4%、GDPの0.29%にすぎない。

  しかし、航空機産業は部品調達のグローバル化が進展し、多くの日本企業が部品製造を担当しており、米ボーイング社のB787の機体製造では数十社が参加し、約35%を生産している。

  今後、B787が増産態勢に入るほか、三菱リージョナルジェットの生産開始で、部品生産発注の増加が予想されている。それだけに関連産業の期待は大きく、国内各地域では、航空機産業への参入に向けて協議会や研究会を立ち上げ、技術向上と人材育成の取り組みを行っている。

  また、関東では「まんてんプロジェクト」が新潟市と連携し、サポーティングインダストリーの補助金を受けてエンジン開発に取り組むなど、新たな動きも出始めている。

外資企業の誘致強化で
アジア拠点化を推進

  アジア新興国が経済成長を遂げる一方で、わが国の市場は相対的に縮小している。また、アジア諸国が海外企業の誘致支援策を強化し、特定産業や機能などターゲットを絞った産業政策・企業誘致を積極的に展開しているなか、日本に立地する企業が本社機能や開発拠点を海外に移転する動きが見られ、わが国はアジア地域の中核拠点としての競争力を失いつつある。

  その要因の一つがビジネスインフラの問題だ。たとえば実効法人税率をOECD諸国は約26%に、アジア諸国は約25%に引き下げているのに対し、日本は40.7%で高止まりしていた。こうした状況の下、政府はグローバル企業の研究開発拠点やアジア本社の呼び込みを促進する必要があるとの認識から、「特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案」を通常国会に提出した。

 具体的には、国が認定したグローバル企業が、国内で新たに行う研究開発事業および統括事業に対し、法人税特例として5年間20%の所得控除(法人実効税率の引き下げと併せて約29%)や、特許料の軽減、就業予定外国人の入国管理手続きの迅速化(通常1ヵ月を10日程度に短縮)、英文申請を可能にするなど。こうした支援措置によって海外からの投資を呼び込み、「日本のアジア拠点化」を図ることで、新たな事業の創出と雇用増大につなげていくのが狙いだ。

 中国やインド、ASEANのGDPの合計は、00年では日本の半分以下だったのが、09年には1.5倍にまで成長している。今後の企業立地は、国内における新たな産業の動きを注視する一方で、グローバルな視点を持った立地戦略が必要になる。