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焦点:ドル調達コスト高止まり、不確実なトランプ政策で

2017年1月24日

[東京 24日 ロイター] - 為替スワップ経由のドル調達コストが、年明け後も高止まっている。金融機関の3月期末越えの資金繰りはめどが付き始めたとみられているが、2008年のリーマン・ショック直後のレベルから下がらない。

米トランプ新政権の下で、米金利やドルの見通しに不確実性が高まる中、ドル供給先である欧米銀が様子見を決め込んでいるとされ、今年も本邦勢はドル調達難の状況が続きそうだ。

<下がらないドル調達コスト>

円投/ドル転でヘッジ付きのドル債投資をする機関投資家は、3カ月物のドル資金を調達するケースが多い。3月が決算期末の金融機関は、昨年末から最も資金需要が高まる季節の1つである期末越えの資金の確保を進めている。

期末のドル資金需要が高まった昨年12月28日に、為替スワップ経由のドル調達コストは184ベーシスポイント(bp)まで急騰した。

年明け後、3週間が経過し、本邦勢の3月期末越えの資金繰りは概ね、めどが付き始めたとみられていた。

しかし、現在の調達コストは165bp程度と、低下幅は限定的で、リーマン・ショック直後(160―200bp程度)とほぼ変わらない高水準で推移している。

調達コストのうち、日米金利差からのかい離を表すベーシスも84.28bpから20bp程度低下しただけだ。

市場では「1月になれば3月期末越えの資金繰りもめどが立ち、ドル調達コストは素直に下がると思っていたが、ベーシスはまだ65bpもある。この規模のベーシスが金融危機でもないのにダラダラ続くのを見たことがない」(金融機関資金担当)との声が漏れる。

<不確実性高まり、様子見決め込む欧米銀>

ドル調達コストの高止まりの要因は、ドルを供給する側の欧米銀にもある。

ドル供給サイドの欧米銀では、リーマンショック後に厳格化した金融規制により、クロスカレンシースワップの予想収益率が大幅に低下。加えて最近では「トランプ要因」とも呼べる金利や為替の不確実性に直面している。

 「ドルの短期金利が上がるのか下がるのか分からない中で、流動性を提供する意味がない」(米銀)──。資金供給を行う金融機関は将来の金利予想に基づいて、運用計画を立てるが、金利が上がるか下がるかさえ分からない状況では、様子見を決め込むのが最善と言うわけだ。

これまでは、インフラ投資で米景気は改善、米金利高・ドル高が続くというのが金融市場のメインシナリオだった。しかし、米金融政策はトランプ新政権との絡みで、ここにきて不透明感を強めてきている。

今月17日、トランプ新政権の上級顧問(現在)のアンソニー・スカラムッチ氏は、世界経済フォーラムの年次総会で、ドル高リスクを警告したうえで、新政権は連邦準備理事会(FRB)の金融政策を「ドル高抑制の道具として使うかもしれない」と発言した。

今年3回の米利上げが市場のベースシナリオ。トランプ新政権下におけるインフレ期待の高まりで、長期金利は上がるとの想定が多数になっている。

ただ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの主席研究員、廉了氏は「資本流出に伴う新興国不安や政治の圧力により、FRBは思うように利上げができず、(長期金利は上がるので)結果的にイールドカーブが立つイメージをもっている」と話す。

<日銀テーパリングでもベーシスは高止まり>

日銀の中曽副総裁は20日、為替スワップ市場における非米系銀行のドル調達コストの上昇について、利上げを進める米国と金融緩和を推進している日欧の金融政策の方向性の違いや、国際金融取引を行う銀行に対する規制強化などが影響していると指摘した。

実際、ベーシスはFRBがQE3(量的緩和第3弾)終了を決定し、日銀が年60―70兆円のペースで増やすとしていたマネタリーベースを、約80兆円まで拡大する「バズーカ2」を決定した2014年10月ころから、明確な上昇傾向に入っている。

ただ、日銀の国債買い入れペースは落ちている。2016年は78.6346兆円と、80兆円を下回り、今年は額面ベースで67.8兆円程度に低下する見込みだ。じわりと進む日銀の国債買い入れ減額は「暗黙のテーパリング」(外国証券)との指摘も出ている。

しかし、テーパリングが進んでも、米金利が上昇したり、ドルの流動性が低下すれば、日米金利差は縮小せず「円の相対的過剰」は不変となり、ベーシスは高止まりが続くことになる。

<金利差とコストのいたちごっこ>

ドル調達コストの高止まりは、国内金融機関のドル建て資産運用の障害となりかねない。

邦銀大手行では、ドル建て投融資における「調達のボトルネック」を解消すべく、外貨建て預金の獲得を進めているほか、ドル建ての対中国融資などを引き揚げ、資産サイドの圧縮も進めている。

 「金利差から、ドル債への投資意欲があるのは間違いないが、足元では調達のボトルネック要因もあり、外貨ポジションをどんどん増やしていくような状況ではない」(廉氏)という。

財務省の対外証券投資データによると、本邦勢は昨年12月に2兆2652億円相当の外国証券(株、中長期債、短期債)を売り越した。今年に入ってからは、1月半ばまでに約9000億円の買い越したが、累計で約10兆円の買い越しとなった昨年1―3月に比べて、出足は鈍い。

需要サイドの本邦勢がドル債投資を圧縮すれば、ドル/円スワップでは需給が緩み、ドル調達コストは低下するはずだが、金利差狙いのドル債投資が続く限り、金利差と高い調達コストの「いたちごっこ」は続くことになる。

(森佳子 編集:伊賀大記)

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