しかも、国債は国が元本を保障してくれているから、安全極まりない。まさにノーリスク。これをメガバンクともなれば、数千億円単位、兆円単位で行っている。1兆円なら100億円規模の利益。預けられたお金で国債を買うだけで、莫大な利益を出せる。

 一定の条件はあるものの、同じように元本が保証されている預貯金と国債の金利差を見ていると、間に入っている郵便貯金や銀行に莫大な手数料が手に入る仕掛けになっているのか、といったうがった見方もしたくなる。だいたい、預貯金が国債に回っているのであれば、自分で国債を買ったほうがいいではないか。そう、国ももっとはっきりとアナウンスすればいいではないか。

 だが、ごくごく普通に日本で過ごしていたならば、そんなことをわざわざ意識することはないのかもしれない。誰もそんなことは教えてくれないし、騒いだりもしない。しかし、一歩でもそこから離れた世界に身を投じ、「自分の頭で考える」ようになると、それが見えてくる。「何かがおかしい」と、松本さんは考えたのだ。

お金について
何も教えてもらっていない

 では、なぜ、日本の預金者は、この状況に怒りを示さないのか。もっと高い金利にせよ、法人向けと同じ条件の個人向けの金融商品を出せ、と言ってもいいのではないか。これに対しては、松本さんが言う。

「端的に言ってしまえば、お金について教えてもらっていないから、だと思います。金利にしても、ほとんどすべてどの金融機関も横並びですから、選択肢もないわけでしょう。みんながそうしているから、そういうものではないか、と思い込まされてしまっているんだと思うんです。

 僕はよく言うんですが、アメリカの子どもたちの中には、朝からチーズマカロニばかり食べさせられる子どもがいます。でも、それは食習慣なんです。子どもも喜んで食べる。ただ、毎朝、チーズマカロニばかり食べていたら、他の選択肢は浮かばなくなっていくんですね。間違っても、ダシを取ったおいしい味噌汁と焼き魚なんて浮かびっこない。食べてみたら、びっくりするくらいおいしかったとしても、です。