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焦点:政府は米国抜きのTPP考えず、通商交渉へ新組織も検討

2017年1月25日

[東京 25日 ロイター] - トランプ米大統領が環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を決めたが、安倍政権は米国抜きのTPPは戦略的にもあり得ないとの立場を維持、豪州などが言及する中国の参加には消極的だ。

東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などもTPPをモデルに交渉していく方針で、中国に対しては為替や資本規制の改善を迫る必要性も指摘される。一方、政府は今後の通商交渉にあたる組織の新設も検討する構えで、対米2国間交渉も含め、通商戦略が新たな局面を迎えつつある。

<米抜きのTPPは「あり得ず」>

 「TPPの狙いは中国主導でなく日米主導の経済圏を確立すること。戦略的に米国抜きはあり得ない」──政府関係者の一人はこう述べ、安倍政権としてはあくまでも米国が参加するTPPの発効を目指してトランプ大統領を説得していく考えを示した。

安倍首相も25日の国会で「TPP協定の戦略的・経済的意義について、腰をすえて(米新政権の)理解を求めていきたい」と繰り返し、「この成果を基礎として、日EUのEPA(経済連携協定)のできる限り早期の大枠合意を目指すとともにRCEP、日中韓FTA(自由貿易協定)などの交渉において質の高い協定をめざしていく」と強調。TPPをモデルに他の貿易協定を締結していく姿勢をみせた。

実際、TPPは米国抜きには発効しない。2年以内にTPP域内の国内総生産(GDP)の合計の85%以上を占める6カ国以上の批准が条件で、米国抜きでは発効できない仕組みだ。また、米国抜きでのTPPの合意には再交渉が必要となり、相当な時間がかかる。

アジア開発銀行研究所・吉野直行所長(慶応大学名誉教授)によると、米国抜きのTPPによる各産品への影響や自由化までの猶予期間の試算を各国ごとにやり直す必要があり、「そう簡単にできる話ではない」という。

<中国参加の協定には消極的>

このため、豪州やニュージーランドは、米国抜き、もしくは中国などアジア諸国の参加を促したかたちでTPPを実現する考えや、RCEPを推進する方向を示している。

しかし、日本政府の中にはTPPへの中国参加や、中国主導となる可能性のある貿易協定には、反対意見も根強い。

ある政府関係者は「TPPに中国が加入してその価値を薄めるのなら、その発効にエネルギーを費やすには値しないだろう」と指摘する。

また、「TPPがとん挫しても日本がRCEP参加に傾斜するという話にはならない。参加国が増えてRCEPが拡大しても中国の都合の良い形にしかならないだろう。トランプ大統領にそれを理解してもらうしかない」と指摘する政府関係者もいる。

経済交渉を担当する政府筋の一人は「(中国も含む)RCEPの交渉は淡々と進めている最中。具体的な条件は言えないが、中国との関係は極めて重要ファクター」と見ている。

アジア開銀研究所の吉野所長は「TPPが実現しないならRCEPを進めればよい」との考えだ。ただ「既にアジアの中で中国のプレゼンスは 日本が思っている以上に大きい。貿易量もODAもとっくに中国に抜かれており、日本のアジアでのプレゼンスは中国と比べて既に低い」として、「日本にとって大事なのは、アジア諸国に対して中国が満たすべき条件をきちんと伝えること」だと指摘。自由貿易圏を発展させるためには、中国が為替レートを市場メカニズムで動くようにすること、資本移動を自由化することを条件として挙げている。

<新組織を検討、日米協議も視野>

トランプ大統領は、TPPよりも2国間貿易提携に力を入れる方針を示している。安倍首相は、この点についてスタンスを明確にはしてないが、否定はしていない。25日の国会でも「(米側の)閣僚人事の承認が進み、態勢が整うにしたがい具体化されてくると思われる。それまで米国の方針を予断することは差し控えたい」と述べた。

萩生田光一官房副長官は25日午前の会見で、日米交渉について「自動車の部分だけ2国間でということにはならないと思う」との見通しを示した。一方で、政府が日米協議を念頭に通商交渉の新組織を発足させるという一部報道に関して、現段階で新組織を作るとは決定してないが、「検討のひとつ」と述べ、新組織の発足を視野に入れていることを明らかにしている。

ただ、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「2国間FTAの乱立が複数のルールや規則につながり、世界貿易の障害となることは自明の理だ。こうした筋論や自由貿易主義の理想を、日本はAPECやTPP参加国を味方につけて、米国側に諭すべきである」と主張している(ロイター日本語サイト:2017年の視点より)。

*見出しを修正しました。

(中川泉 編集:石田仁志)

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