困った。というよりも、現在進行形で困っている。大地震に津波、それに続く原子力発電所の冷却装置の停止……。どれも深刻すぎる。何より、このコラムの題材である「食」も「職」も、重大なピンチではないか。

「こんな時に、書くべきことが見つからない……」

 気分がどんどんと滅入り、落ち込んでいく。NHKのニュースを見ていないと不安だし、見ていても不安になる。情報が次から次へと更新され、ただでさえ小さすぎる脳の処理能力が追いつかない。予定していた取材や打ち合わせもキャンセル。そのうちに外出するのもおっくうになり、自宅にこもりがちになった。

 そんな時、目の覚めるようなメールが届いた。

「会津魂で頑張って下さい!」

 わたしは白虎隊か?

 そうだった。筆者は福島県会津地方の生まれなのである。

自らの「職」もピンチに?
すわ休載、を“会津魂”で乗り切る

 考えてみれば、地震発生以来のこの尋常ではない落ち込みは、福島県人の1人でありながら原子力に関する知識もなく、とりあえずの食糧は手に入り、東京で安穏と暮らしていられることへの罪悪感に由来していた。

 罪悪感にうちひしがれていても、事態は好転しない。ここは識者の方々のご意見にしたがい、冷静に経済を回す努力をすべきである。

 と思う矢先から、今度はそれを否定したくなる考えもあれこれと浮かぶ。そもそも、一介のライターがどんなに必死で原稿を書いたとして、GDPに貢献できる気はしない。それに、パソコンの前で下手に悩みすぎると節電計画の邪魔になる。それに何より、福島第一原子力発電所の動向があまりに気になりすぎて、経済活動にじっくりと集中できないのだ。

 そんな時に知人から送られてきた、「会津魂」を鼓舞するメール。勇気づけられつつも、ある大きな疑問が頭に浮かんでしかたなくなる。

「こんな時に締切を守ろうとし、古来の魂を発揮しようとするのははたして、正しいことなのか」