[北京 25日 ロイター] - 貿易から気候変動に至るまで、中国は世界の指導的な役割を担いたいとの静かな願望を抱いている。メディアとの確執や抗議活動が目を引く就任直後のトランプ米大統領に対して、卓越した習近平国家主席の指導力を際立たせようとしているのだ。

トランプ氏が米大統領に就任する数日前、習主席はスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で基調講演を行い、グローバル化や自由貿易の重要性を強調。中国が世界でより大きな役割を担う意思を示した。

南シナ海の領有権問題においてさえ、中国は米国の挑発的発言に乗らなかった。ホワイトハウスのスパイサー報道官は今週、中国による南シナ海での人工島建設について、トランプ新政権は国際水域を自国の領土とする行為は阻止する考えを表明した。

この発言に対し中国は、同海域における航行の自由を守ることに尽力しており、当事国間で話し合い、平和的解決を望むとの考えを示し、抑制的な態度で米国に言動を慎むよう求めた。

「あなた方は『米国第一』だが、われわれは『人類運命共同体』だ」と、中国人民解放軍の元幹部で強硬派の論客として知られる羅援氏は今週、自身のブログで主張。

「あなた方は『閉ざされた国』だが、われわれは『一帯一路』だ」と記して、同氏は中国が進める新経済圏構想に言及した。

米国が世界で担ってきた従来のリーダーシップを引き継く意思はないと中国は繰り返し強調してきたが、中国外務省幹部は今週、そうならざるを得ない可能性を認めている。

「もし中国が世界の指導国としての役割を演じていると誰かに言われるとすれば、それは中国が前面に出ようとしているのではなく、前面にいた国々が後退して、その立場を中国に明け渡しているからだ」と、同省国際経済局の張軍局長は語る。

<進展>

こうしたメッセージは今週、トランプ大統領が環太平洋連携協定(TPP)離脱を正式表明し、アジア諸国と距離を置く姿勢を示したことでさらに強まった。一部のTPP参加国は、今や中国が参加することを期待している。あるいは、中国が主導する自由貿易協定に目を向けている。

「多くの重要な国際会議の場で、中国の指導者は自国の提案を提示しており、世界発展に対し確実に弾みをつけている」と、外務省系列のシンクタンク中国国際問題研究所(CIIS)の蘇暁暉氏は、米国のTPP離脱について人民日報海外版にこう記している。

同氏はまた、「アジア太平洋地域の経済統合プロセスにおいて、自国の指導的役割を常に考えている国々と比べ、中国は『責任』と『進展』により留意している」と指摘している。

中国が今年5月に開催する「一帯一路」国際協力サミットフォーラムは、同国が世界的なインフラと投資においてリーダーシップを発揮する機会の1つである。

その準備に詳しい外交筋によると、同フォーラムは2014年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が行われたのと同じ豪華なコンベンションセンターで開催される可能性が高く、習主席にとって今年最も注目される外交行事となるべくお膳立てをしているという。

「中国はほぼ世界中に声をかけている」とこの外交筋は語った。

中国がリーダーと見られたいもう1つの分野は気候変動だ。トランプ大統領は過去に気候変動問題は「でっち上げ」だと発言したことがあり、大統領選では米国が批准済みの「パリ協定」から脱退すると宣言していた。

中国外務省国際協力局の李軍華局長は、世界が気候変動を憂慮し、各国がパリ協定を尊重するのか懸念していると述べ、「中国に関する限り、主席は中国がその一端を担うとの立場をはっきりと示している」と語った。

<学習過程>

しかし常にこのようにいくとは限らない。より責任ある大国となるべく、中国は長く厳しい学習過程のさなかにある。

2013年、南シナ海の領有権をめぐる長年の争いでフィリピンに腹を立てていた中国は、フィリピンが超大型台風に見舞われた後、わずかな支援しか行わなかった。このときばかりは、人民日報系の国際情報紙「環球時報」も、中国の国際的なイメージが打撃を受けると異を唱えた。

またその過程も順調ではないだろう。台湾問題など主要な核心的課題においては、中国が引くことはないとみられる。

トランプ大統領就任後、中国外務省はまず、「一つの中国」の原則の重要性をトランプ政権が完全に理解することを求めた。トランプ大統領は同原則に疑問を投げかけているが、米国政府はこれまで台湾の主権をめぐる問題において中国の立場を受け入れてきた。

中国はまた、自国の人権問題をトランプ政権が放っておくことを期待している。

人民日報海外版は21日、中国無料メッセージアプリ「WeChat」アカウント上で、トランプ氏の就任演説は「民主主義」にも「人権」にも触れなかったと好意的に指摘。米政治家によって「こうしたことは大げさに宣伝されていたのかもしれない」とコメントしている。

(Ben Blanchard記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)