ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
ものつくるひと

トレビーノが重い・高い・邪魔な0号機からヒット商品になるまで

「トレビーノの改良・販売」佐々木直美(東レ トレビーノ販売部長)

週刊ダイヤモンド編集部
【第56回】 2017年2月17日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage
Photo by Toshiaki Usami

 「君はこれからこれを売るんだよ」。上司が得意げに見せてきたのは、武骨に輝く、いかにも重そうなステンレスの塊だった──。

 「水は東レのトレビーノ♪」のキャッチコピーで知られる東レの家庭用浄水器「トレビーノ」は、人工透析に使われる中空糸膜の技術を応用して開発され、2016年に発売30周年を迎えたロングセラーシリーズだ。14年には本体とカートリッジを合わせた累計販売個数で1億個を突破。蛇口に直接取り付ける蛇口直結型では、国内シェア圧倒的ナンバーワンを誇る。

 しかし、ヒットを勝ち取るまでには紆余曲折があった。

 発売当初から同商品のマーケティングや販売に携わってきたトレビーノの生き字引である佐々木直美は、試作品だった冒頭の「幻の0号機」を初めて見たときの衝撃が忘れられない。大きさにして、縦30センチメートル×横13~14センチメートル、奥行き13~14センチメートル。重さは4~5キログラム。蛇口に付けられるタイプではなく、流しの周りに置く据え置き型で、価格はおよそ5万円もした。

 開発者は良かれと思ってこの形にしたのだ。東レが普段身を置く法人顧客相手のビジネスの世界では、頑丈でシンプルな製品を提供することこそ“正解”だからだ。

 入社後に配属された課が円高不況などにより取りつぶされ、トレビーノを扱う課に異動してきた佐々木は、腹をくくって売り歩いた。が、案の定、「重い、高い、邪魔になる」と言われるばかりで鳴かず飛ばず。最後は社内人脈と地縁、血縁にすがり、大幅値下げしてどうにか300台弱を売った。

 「駄目なんだ、こういうものじゃ」。あらためて確信する佐々木。トレビーノ改良での試行錯誤は、こうした強過ぎる逆風に煽られたところから始まった。

 まずはステンレス製からの脱却である。「言ったんですよ、私。『これ、足の上に落ちたら骨が折れると思いますけどいいんですか』って」(佐々木)。使い勝手を考えてもとにかく軽くする必要があった。

 また、ステンレス製は傷も付きやすい。「だいたい、台所の中に金属の塊なんて置きたくないでしょ。あのころの炊飯ジャーって花柄だったりしましたから」(同)。

1
nextpage

今週の週刊ダイヤモンド

2017年3月4日号 定価710円(税込)

特集 文系こそ学べ 勝つための絶対スキル データ分析

統計分析 Excel入門 データに強くなる

【特集2】
コーヒービジネス大活況
サードウェーブの次に来る波

【下記のサイトからご購入いただけます】

(ストアによって販売開始のタイミングが異なるため、お取扱いがない場合がございます)

【下記のサイトからご購入いただけます】

(ストアによって販売開始のタイミングが異なるため、お取扱いがない場合がございます)

【下記のサイトからご購読いただけます】

(ストアによって販売開始のタイミングが異なるため、お取扱いがない場合がございます)

関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

週刊ダイヤモンド編集部


ものつくるひと

「ものつくるひと」は、画期的製品・サービスの開発に取り組む担当者の横顔に迫る『週刊ダイヤモンド』の人気連載です。「もの」とは文字通りの「物」だけではなく、店舗の開発、新サービス、規格など、広めに定義してお届けします。

「ものつくるひと」

⇒バックナンバー一覧