3月11日に発生した東日本大震災。多数の死傷者が出て、壊滅的な打撃を受けた被災地・石巻の赤十字病院へ、日本医師会が派遣する災害医療チーム「JMAT」(ジェイマット)の一員として派遣された30代医師の現場レポートを、可能な限りリアルタイムに更新していく。災害そして医療の現場で、日々何が起こっているのか。

樹木も住宅の基礎もない、
かつての絶景スポット

 我々の医療チームは、そもそも厚木市にある「ヘルスケアクリニック厚木」に勤務する医師と放射線技師、事務員で構成されている。今回、神奈川県医師会が、日本医師会による災害医療チーム「JMAT」(ジェイマット)に参加する医療チームを募集していたので、当クリニックがそれに応募。宮城県の石巻赤十字病院に派遣されることになった。

 災害支援初日の今日は、石巻赤十字病院で朝7時にミーティングを開き、午後からの医療支援を前に石巻市内全域を視察することにした。同病院の災害対策本部の医師から教えてもらった石巻市の日和山公園に向かう。

 同公園は、石巻市内を一望できる絶景のスポットとして、宮城県のガイドブックにも載っているという。この時期は、梅や桜が咲き、花見客も集まってくるそうだ。

 そこへ車で向かうと、ガイドブックとは対照的な光景があった。

 境界線で区切られたようにある地点から建物がすべてなぎ倒され、更地のようになっている。樹木はおろか、住宅の基礎すらも流されているのが分かった。

 かつての市内の絶景スポットは、津波の大参事をまざまざと映し出していた。我々神奈川県医師会JMATチームは言葉もなく、ただ手を合わせて祈ることしかできなかった。