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焦点:日銀物価見通し据え置き、市場観測調整 緩和効果の強化狙う

2017年1月31日

[東京 31日 ロイター] - 日銀が31日の金融政策決定会合で経済成長率見通しを上方修正する一方、物価見通しを据え置いたことを受け、市場では、無用に長期金利への上昇圧力をかけないための配慮との見方が浮上している。

しばらくはゼロ%程度の長期金利目標を維持し、緩和効果の強化でインフレ期待の高まりを狙う日銀の姿勢が鮮明になったといえそうだ。

日銀は会合後に公表した新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で2016、17、18年度の実質国内総生産(GDP)見通しを前回の昨年10月の同リポートから上方修正する一方、物価見通しについては16年度を小幅下方修正、17、18年度をそれぞれ前年比1.5%上昇、同1.7%上昇に据え置いた。

展望リポートでは、成長率上方修正の背景について「海外経済の上振れや為替相場の円安方向の動き」などを挙げたが、そうであれば需給ギャップの改善や輸入物価の上昇などを通じて物価にも上昇圧力がかかるはず。

それにもかかわらず物価見通しが据え置きとなった背景には、インフレ期待の下振れが考えられる。

しかし、黒田東彦総裁は会合後の会見で「物価の実績値は弱めに推移している。16年度の見通しも下振れしている。そうしたことを反映した」と述べるにとどめ、市場からは「クリアカットな説明がなかった」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏)との感想が少なくない。

展望リポートではインフレ期待について、足元で「弱含みの局面が続いている」とし、先行きも「海外経済を中心に景気に対する先行きの不透明感が引き続き強い中で、企業の価格・賃金設定スタンスが慎重なものにとどまるリスクがある」と指摘。

特に「今春の賃金改定交渉に向けた動きが注目される」と明記し、盛り上がりに欠ける春闘への不安感もうかがえる。

もっとも、これまでの日銀であれば「賃上げ機運を高めるためにも、強気の物価見通しを示していたはず」(国内金融機関)との声もあり、物価見通し据え置きの背景には「見通し上振れによって、長期金利目標の引き上げ観測が強まるのを避けたかったのではないか」(同)との見方が浮上している。

実際に米トランプ政権の政策への期待や、米連邦準備理事会(FRB)の利上げを背景に米金利が上昇する中、日本の長期金利にも上昇圧力が継続している。

これに対して日銀は、イールドカーブ・コントロール(YCC)政策の下で、固定金利で無制限に国債を買い入れる「指値オペ」や、国債買い入れの増額を実施するなど長期金利を目標とする「ゼロ%程度」に抑制することに懸命だ。

物価2%目標の実現に向けて、最も重視しているインフレ期待の先行きに不透明感が根強い中で、長期金利目標の引き上げ観測が高まることは、日銀も本意ではないはず。

黒田総裁は会見でインフレ期待について「需給ギャップが縮小し、原油価格の下押し効果が解消されていけば、実際の予想物価も上がっていくと期待してる」と語った。

賃上げに関しても「企業収益は過去最高水準に近く、雇用はさらにタイトになっている。春闘で賃金が上昇していくという基盤は整っている」と期待感を表明した。

相対的に慎重な物価見通しを受けて、市場では「日銀は当面、現行の金融政策を維持すると考えられる」(第一生命経済研究所・主任エコノミストの藤代宏一氏)との見方が増えている。

このような見方が増えることは、日銀にとって追い風になる可能性がある。1月雇用統計の結果によっては、3月の米利上げ観測が一段と盛り上がり、日米金利差が拡大する。

その結果、円安はジワリと進行し、株高を伴って企業や個人のマインドが改善していけば、投資や消費を後押しするだけでなく、円安効果で物価が上がりやすくなる。

日本国内のインフレ期待は、足元の実績値に振らされやすい傾向があり、いったん物価が上がり出すと、期待インフレ率の上昇に弾みがつく可能性もある。

こうしたメカニズムを前提にすれば、日銀はしばらく長期金利目標の維持を徹底し、実際の物価の高まりによって、インフレ期待の上昇につなげていく戦術に入ったとみることもできる。

ある国内銀行の関係者は「やはりポイントは、円安が進むかどうかだろう」と述べている。

(伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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