[東京 1日 ロイター] - トランプ米大統領が31日、日本が通貨安誘導を行ってきたと発言したことで、為替市場で円高が進行した。日本政府は「批判はあたらない」(安倍晋三首相)との立場で、10日の日米首脳会談の際、麻生太郎財務相が大統領に日本の為替・金融政策について説明、意思疎通を図っていく考えだ。

<通貨安誘導発言、「批判あたらず」>

トランプ大統領は1月31日、米製薬会社との会談で、他国は通貨安誘導に依存しており、日本も何年も誘導してきた、と批判した。

これを受けて外国為替市場では円高が進行、一時112円近くまで上昇した。これに対し、浅川雅嗣財務官は「為替は市場で決まるものだ」と強調。トランプ発言の通貨安誘導が日本の金融政策を指しているとすれば「日本の金融政策は為替を念頭に置いたものではない。介入も最近やっていない」と反論した。

安倍首相も1日午後の衆議院予算委員会で、「日銀の金融政策が円安誘導という批判はあたらない」と発言。「為替の問題も含め、日米間で意思疎通を図ることが重要だ」との考えを示した。

菅官房長官も会見で、トランプ発言による「わが国への影響はない。為替の極端な変動に対しては従来通りあたっていく方針に変わりない」と語った。また、「為替の安定が重要だ」とし、引き続き市場の動向を緊張感をもって注視していく考えを示した。

<金融政策の意図説明へ、財務官が事前調整>

政府・日銀は、日銀が実施してきた量的・質的金融緩和政策(QQE)はあくまで「2%の物価目標実現のためで、為替のためでない」(黒田東彦総裁、1月31日会見)との立場だ。

もっとも、日銀の巨額の国債買い入れによる金融緩和の実施後に、大幅な円安が進んだ。昨年9月に導入した、長期金利をゼロ%近傍に維持するイールドカーブコントロール(YCC)は、米連邦準備理事会(FRB)が段階的な利上げ局面に入った現状では「円安になりやすい環境を作っている政策の一つ」(国内銀行関係者)との見方が市場では多い。

このため、ある政府筋は、10日の日米首脳会談の際、麻生副総理兼財務相が、トランプ米大統領に日本の為替・金融政策を説明することになったと明らかにした。

また、別の政府筋によると、安倍晋三首相や麻生財務相の訪米に先立って、浅川雅嗣財務官が米国に入り、米政府関係者と為替問題などについて意見交換し、日本側の立場を説明するなど、事前の調整を行う予定。

<全体像つかめぬ新政権、様々なレベルで議論>

巨額の国債買い入れによる金融緩和は、2008年のリーマン・ショック後、FRBが実行してきた政策でもある。

日本政府・日銀関係者は「米国に批判されることはないだろう」(政府高官・日銀幹部)と予想してきた。しかし、予想外の政策方針を大統領令で矢継ぎ早に打ち出すトランプ政権の意図について「その全体像をつかみかねている」(政府関係者)のが現状だ。

為替や金融政策でトランプ大統領から批判されても、デフレ脱却のために推し進めているYCC付きQQEをやめることはできない。

元日銀理事でみずほ総合研究所・エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏は1日、米国のトランプ大統領の発言によって日銀の金融政策が縛られることはない、との見解を示している。

当面は2016年に為替介入はゼロだったことなどをトランプ大統領に直接説明し、通貨安を意図的に目指してきたことはないという日本の立場に理解を求めることになる。

菅官房長官は「日米関係をどのように発展、深化させていくか、そうした点から様々なレベルで議論していくことになる」としている。

また、安倍晋三首相のブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は1日、日本経済研究センター主催の討論会で、トランプ米大統領が主張する「国境税」について、経済学上はドル高を招くことが証明されていると述べ、輸入制限のための国境税のような措置と円安批判の並立は、理論上矛盾していると批判した。

浜田氏は「トランプ大統領がそうした主張を押し付けてくるなら、日本経済もそして世界経済も破滅する。そうしたことを踏まえて、(政府は)きちんと交渉してほしい」と述べた。

*内容を追加します。

(竹本能文 中川泉 編集:田巻一彦 石田仁志)