この3年から5年という時間には、根拠があります。

 熟達化理論によれば、その道でエキスパートになるためには10年かかる、というのが学術的な定説になっています。

 その最初の3年から5年が、一通りのことができるようになる、いわば一人前になるための期間。それだけの時間をかければだれもが自然と熟達する、というわけではなく、そこでは「よく考えられた練習を積むこと」が条件となることも定説になっています。

 では、よく考えられた練習とは何か。

 それは、「課題が適度に難しく、明確であること」、「実行した結果について、フィードバック(先輩などによる振り返り、検証)があること」、「何度も繰り返すことができ、誤りを修正する機会があるような練習」を指します。

 フィードバックこそが、マネジャーであるあなたの出番でしょう。手とり足とり間近で指導することには限界があり、ほどなく若手はひとりで業務行動を始めます。本来、ここからがあなたの真価が発揮されるところ。ひとつの業務にキリがついたところで、若手の振り返りの相手になります。

 成功した理由は何か、失敗はなぜ起きたのか。次にうまくやるためには、何をどのように修正すればいいのか。そんな振り返りを通してアドバイスすることが、フィードバックということです。

 そのフィードバックを、より実りのあるものにするために必要なのが、職場全体の関与です。

 若手に指導的に振る舞うのは、OJTリーダーやメンターだけに限定されるべきだ、という誤解はないでしょうか。制度のもとで役割が決められることで、かえって職場に不自由な空気が生まれてしまうことは、意外に多いようです。