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アングル:日産、EV巻き返しへ積極投資 米市場に不透明感も

2017年2月1日

[東京 1日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>が電気自動車(EV)で新たな攻勢をかけている。カルロス・ゴーン社長は「EVは未来の一部」として投資を積極化する構え。しかし、巨大市場の米国ではトランプ政権誕生で環境車の需要に不透明感も漂う。消極的だった競合他社が続々とEVに舵を切る中、先行してきた日産は主導権確保へ厳しい戦いを強いられそうだ。

 「われわれはEVのリーダーだ。世界で40万台以上(ルノー<RENA.PA>を含む)を販売しており、今後もリーダーシップを発揮していく」――。ゴーン氏は1月中旬、ロイターとのインタビューでこう強調した。

同氏はまた、投資を増やし、バッテリーやパフォーマンスを改良して低価格のEVを投入するとも述べた。今年初めに米ラスベガスで開かれた家電見本市(CES)では、EV量産車「リーフ」に自動運転技術を搭載した次期モデルを「近い将来」投入すると宣言した。

<HVは「充電不要のEV」に転換>

EVを環境車の本命とする日産は2010年末、社運を賭けてリーフを投入したが、売れ行きは期待通りには伸びていない。同社の坂本秀行副社長は、現行リーフでは技術の向上によってバッテリーに経年劣化や寿命の「不安はなく」、航続距離も「懸念はない」としているが、特に初期型のユーザーからはバッテリーや航続距離に関する不安や不満の声が多く上がっていた。

日産は当初、17年3月期までにEVを世界で累計150万台(ルノーも含む)販売するという目標を掲げたが、遠く及ばず、13年には目標達成時期を2―3年延期。EVの強化は優先課題として維持しながらも、国内を中心としたハイブリッド車(HV)人気の流れに逆らえず、12年には同期までにHV15モデルを販売する計画も打ち出した。

トヨタ自動車<7203.T>のHVが牛耳る国内の環境車市場で、どう反転攻勢をかけるか。昨年11月に国内市場に投入した新型「ノート」には、ガソリンエンジンで発電する電気で走る新しいパワートレイン「eーPOWER」を搭載、新たな需要開拓を狙った。

ノートはHVの一種だが、電気モーターだけで駆動するため「充電不要のEV」として売り出された。発売直後の11月は国内の新車販売で、ここ数年1、2位の常連であるトヨタHVの「プリウス」と「アクア」を抜き、1位に躍り出た。12月はプリウスに再びトップを奪われたが、2位につけた。

坂本副社長は今後、「HVで出してきた車のほとんどはe―POWERでカバーしていきたい」と話す。新型ノートのモーターとインバーターはリーフと共通で、e―POWERとEVとは「ビジネス的にはシステムのかなりの部分を共用できる」として量産効果を見込む。乗り味もEVと同様で、「EVの普及にも貢献できる」とみている。

<EVで存在感示せるか>

海外ではEVやプラグインハイブリッド車志向が強まっている。最大市場の中国も補助金などでEV普及を強力に推進。ディーゼル車の排ガス不正問題に揺れた独フォルクスワーゲン<VOWG_p.DE>など欧州勢もEVへのシフトを鮮明にしつつある。これまでHVを推してきたトヨタもEVをもはや軽視できず、昨年12月に社長直轄の組織を設置、これまで慎重だったEVの開発や量産化に向けて動き始めた。

EV販売で先頭を走ってきた日産にとって、こうした業界の流れはチャンスとも言えるが、EV市場での戦いはまさにこれから。ゴーン氏も「どれだけ早く大きな存在感を示せるかが唯一の問題だ」と気を引き締める。

HVを順次e―POWERに切り替えても大きな効果は見込みにくい。16年3月期では、トヨタのHVが世界販売の約12%を占めるのに対し、日産は世界販売約540万台のうち、HVは約9万5000台と2%にも満たない。一方、EV市場では、米ゼネラル・モーターズ(GM)<GM.N>が「シボレー・ボルト」を発売するなどライバルが増え、競争は厳しくなっている。

<不穏なトランプ政策>

トランプ米大統領の政策も懸念材料だ。同大統領は地球温暖化に懐疑的で、米国の大手自動車メーカーや石油会社にとって「障害」となる環境規制の緩和を進める考えだ。まだ具体的な政策は判明していないが、日産は「従来通りエネルギー省など関連当局と深い議論を継続し、貢献したい」(坂本副社長)としている。

こうした中、ホンダ<7267.T>が米国を世界最大の燃料電池車(FCV)市場と位置付け、FCVの基幹部品をGMと米国で共同生産することを決めた。大統領の経済助言チームの一員として、EVベンチャー、テスラ・モーターズ<TSLA.O>の最高経営責任者、イーロン・マスク氏が名を連ねている。これらの動きは日産にとって吉か凶か。米国市場の風向き次第では、日産のEV戦略にも影響が及ぶ可能性がある。

*本文8段落目の誤字を修正しました。

(白木真紀、田実直美 編集:北松克朗)

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