これまで以上に“グローバル化”と向き合わなければならなくなる日本の産業界で、ここにきて“世界の陣取り合戦”に参戦した老舗企業が2社ある。そのうちの1社、元国内1位の関西ペイントの内情に迫る。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

 昨年12月22日、世界で暴れる“野武士”気質の関西ペイントのライバル、地味でおっとりしている“お公家さん”気質の日本ペイント・ホールディングスが動いた。米国本土の中堅塗料メーカーの買収に、推定700億円を投じたのだ。

 こうした積極果敢な海外M&A(企業の合併・買収)は、先行していた関西ペイントのお株を奪うもので、業界ではさまざまな臆測が乱れ飛んだ。だが、日本ペイントとしては、あくまで中国と東南アジアに限られていた進出地域の平準化と為替リスクの分散化に主眼を置いた行動だった。

 関西ペイントは、過去には日本ペイントからベンチマークの対象にされるほど経営体質がスリムな会社だった。だが、今日では財務改革で日本ペイントに先を越され、業績でも逆転された上に、大きく引き離されてしまった。さらに、今回の北米における能力増強のための投資は、ノーマークだった。

 2015年度の関西ペイントの連結売上高は3281億円で、純利益は283億円(図(1))。同じく、日本ペイントの連結売上高は5375億円で、純利益は300億円。日本ペイントは、この年度から、50年来の提携相手であるシンガポールの華僑資本と経営していた40以上の関連会社がフル連結となったことにより、企業規模が一段上のステージに上がった。

 企業規模で大差をつけられた関西ペイントは、インドやアフリカなどの新興国でM&Aを繰り返してきた。社名に「関西」と付く企業でありながら、海外の売上高比率は57%にも達する(図(2))。

 なぜ、関西ペイントが“世界の陣取り合戦”に乗り出したのかといえば、主な理由は三つある。