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焦点:トランプ円安の増益効果、円高時の為替予約で享受できない企業も

2017年2月3日

[東京 3日 ロイター] - 円安による企業業績の拡大に株式市場は高い期待感を抱いているが、一部の企業では円安効果を十分享受できていない。「トランプラリー」が始まる前に行った為替予約が重しとなっているためで、為替差損を計上する企業も出ている。円安メリットに過大な期待をかけすぎれば失望リスクも大きくなりそうだ。

<円高時の為替予約で差損発生も>

スマートフォン用など電子部品を手掛ける日本航空電子工業<6807.T>。海外売上比率は約7割と高い。25日に発表した2016年4―12月期連結決算では、経常利益が前年同期比74.2%減の42億2500万円と大幅減益となり、翌日の株価は11%の急落となった。

売上高は前年比5.1%の増収だったが、利益が大きく落ち込んだ。原価率が悪化したこともあるが、もう1つ大きかったのは為替差損だ。

10─12月期の為替市場では「トランプラリー」もあってドル高/円安が進行。9月末の101.42円が12月末には117.07円と約15%上昇した。期中平均は109.4円と7─9月期の102.4円から7円の円安となっている。

それでも為替差損が発生した背景には、為替予約がある。「第3・四半期前半に、ドル売りの為替予約を進めていた」と同社は説明する。トランプ氏が勝利すれば、大幅な円高が進行するかもしれない──。米大統領選前の市場には、そうした予想も多かった。

為替予約は、将来時点の為替レートを現時点で予約することで、為替変動をヘッジする目的で利用される。円高のリスクが回避できる半面、円安進行のメリットも得られない。

実務上では、実際のヘッジ必要額を超えて予約する「オーバーヘッジ」になる場合もある。ドル売りによるオーバーヘッジ部分は円高進行で差益になり得る半面、円安が進めば差損を生じることもある。

同社では32億3000万円の為替差損を営業外損益に計上した。10─12月期の営業利益は前年同期比では19%減だが、7─9月期との比較では37%の増益だった。しかし、経常利益では為替差損が響き、前期比でも33%の減益となった。

<円安メリットが限定的に>

決算シーズンの皮切りとなることが多く、その期の傾向を占うとして市場の注目度が高い安川電機<6506.T>。23日に発表した10─12月期決算では、通期業績予想を上方修正した。

中国向けを中心に主力事業の堅調な動きを織り込んで、営業利益を前年比15.6%減の310億円、経常利益を同12.1%減の315億円へと、それぞれ従来予想から30億円上乗せした。

ただ、「足元の円安が、それほど顕著に効いたわけではない」と同社関係者は話す。理由はやはり、為替予約だという。

同社は、想定為替レートを中間期時点の105円から115円に修正したが、為替差損は中間期の10億4400万円から7億0300万円への縮小にとどまった。

一部の為替予約を円高の時点で行ったことで、円安メリットが高まらなかったとみられている。

<期待先行の株価、「決算発表時が怖い」との声も>

日銀短観による16年度通年の大企業・製造業の想定為替レートは1ドル=104.90円(下期は103.36円)。株式市場では、輸出企業を中心に、円安による増益期待が強く、日本株を押し上げる要因になっている。

SMK<6798.T>は、通期予想の売上高と営業利益を引き下げたが、経常利益は引き上げた。9月中間期段階では為替差損だったが、10─12月期の円安で一気に累計も差益に転じたからだ。同社では、為替予約は利用しなかったという。

トランプ相場の円安メリットを享受している企業も少なくないが、決算発表シーズンが始まる前の1月19日と2月2日の比較で、日経平均は157円のマイナス。トランプ米大統領の保護主義的な政策が嫌気されている面もあるが、総じてみれば企業業績が株価を押し上げるという強気派の期待通りとはなっていない。

ある上場企業の財務担当者は「円高時に為替予約をすませてしまったため、円安のプラス効果はほとんど出ていない。株価は増益期待を織り込んで上昇しているが、決算発表時が怖い」と打ち明ける。

相場の動き方が激しい際には、為替予約は使い方が難しいが、為替変動による業績への影響をヘッジしたいというニーズも高まりやすい。

実際、トランプラリーのさなかでも、相場の節目とされた107円半ばや110円、115円などで、断続的に輸出企業の活発なドル売り/円買いが観測された。

ニッセイ基礎研究所のチーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏は、為替予約をする企業が増え、円高耐久力はだいぶついてきたようだとしたうえで「それは円安メリットも小さくなることを意味する。円安による増益をあまり期待し過ぎては、実際の決算発表でハシゴをはずされるおそれがある」と指摘している。

(平田紀之 編集:伊賀大記)

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