中国 2017年2月7日

ミャンマーで感じた“親日”という呪縛【番外編】現代ミャンマー事情

2006年に中国に移住し、蘇州、北京、広州、その後上海に約8年在住。情報誌の編集長を経て現在はフリーランスとして活躍する大橋さん。今年から中国人妻と子どもとともに日本に居を移し、中国と日本を行き来する生活に。今回は仕事で訪れたミャンマーで感じた、日本とミャンマー、そして中国との関係について。

 空港を出ると、生ぬるい空気が体にまとわりついてきた。ミャンマー最大都市、ヤンゴン国際空港である。

 現地で発行されている日本語フリーマガジンの仕事を請け負っているため、ここ最近は、中国よりもミャンマーにいる時間が長かった。ミャンマーといえば、長年軍事政権が統治していたことで西側諸国から経済制裁が課せられていたが、テイン・セイン前大統領が民主化へ舵を切ったことで外資の流入が進み、「アジア最後のフロンティア」と称されるほど注目されている。

 2015年11月に実施された総選挙では、アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)が勝利を収め、政権が交代。スー・チー氏は、軍事政権が定めた法律により、夫が外国人のために大統領にはなれないが、国家顧問兼外務大臣に就任し、大統領を越える立場として事実上のトップに君臨している。

 スー・チー氏は精力的に各国指導者と面会し、昨年10月には訪米してバラク・オバマ前大統領と会見。ロヒンギャ族(ミャンマーのイスラム系少数民族)問題やドナルド・トランプ米新大統領の就任などリスク要因はあるものの、米国による経済制裁がいよいよ解除される見通しで、外資によるいっそうの投資が期待されている。

アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外務大臣の邸宅。カリスマ的人気のスー・チー氏だが、ロヒンギャ族問題などリスク要因も多い【撮影/大橋史彦】

あちこちで目にする中国の存在感

 ミャンマーに熱い視線を注ぐのは日本企業とて例外ではない。テイン・セイン前大統領が民主化に舵を切った2012年は、日本政府による尖閣諸島国有化で日中関係が悪化に転じる分水嶺でもあった。以降、日本企業による対中投資が鈍化するのに反比例して、ミャンマー進出が増加している。しかし、日本企業がミャンマーに惹かれる理由は、市場的魅力だけではないように思える。

 日本人がミャンマーを形容する際によく挙げるのが“親日国”だ。ミャンマーの英国からの独立を日本軍が支援したとことから、ミャンマー人が日本人に感謝しているというストーリーなのだが、果たして本当に親日なのだろうか。私の実感としては、あまり感じられなかった。

 確かに路上を走るクルマのほとんどは日本の中古車であるが、それだけで親日国とはいえない。ミャンマー人の対中感情は必ずしもよくないが、西側諸国が経済制裁を科している頃から中国はミャンマーに入り込んでいたこともあり、スーパーや街中では中国製品をよく目にする。家電やスマートフォンについても、韓国や中国メーカーの製品や広告をよく見かけた。「日本製品が流通している=親日」とはいえないのだ。

ミャンマー国内を走る自動車の9割が日本の中古車だという。ヤンゴン市内では急激に自動車の数が増え、朝夕は激しい渋滞に見舞われる。バイクと自転車が禁止されていることも拍車をかけている【撮影/大橋史彦】
日本の社用車や業者が使っていたクルマのロゴがそのまま残っていることも。乗り合いトラックに早変わり【撮影/大橋史彦】
家電・電子機器をはじめ、中国の影響力は強い【撮影/大橋史彦】
高級住宅街を歩くと、中国語の不動産広告が【撮影/大橋史彦】

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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