「女性医師(内科医)が担当した入院患者は男性医師が担当するよりも死亡率が低い」という衝撃的な論文を米国医師会の学会誌で発表し、米国のマスメディアに注目された日本人研究者が、今度は「アメリカ人医師よりも、米国外で医学教育を受けた外国人医師の方が患者の死亡率が低い」という内容の調査研究を発表し、再び米国内で大きな話題となっている。折しも、いまトランプ大統領による移民やイスラム圏7ヵ国などからの入国制限に関する混乱で、米国の医療サービスを質の高い診療で支えてきた外国人医師が、米国を避ける可能性が出てきたからだ。(医学ライター 井手ゆきえ)

米国医師の4人に1人は外国人医師
「入国禁止令」が研修医の採用にも影響

死にたくなければ「米国人以外の医師」日本人の研究が反響(写真はイメージです)

 米国の医師の4人に1人は、米国外で医学教育を受けた後、アメリカンドリームを求めて渡米した米国籍を持たない「外国人医師」だ。

 その多くはインド、パキスタンなど英語圏で医学教育を受けた医師や医学生だが、米国の(かつての)懐の広さを反映して、宗教や政治的立場を異にする中国やシリア、エジプト出身者もかなりの割合を占める。もちろん日本の医学部を出て米国で臨床医として活躍する日本人医師も"外国人医師"に含まれる。

 外国人医師たちは、米国の医学部出身の医師と比べ、へき地や貧困層の住む地域で診療を行う確率が高いことが知られている。彼らは地方の小さな施設や都市部の貧困層の健康を守るプライマリケアの担い手として、あるいは専門医として米国の医療を支えてきた。高齢者医療や腎臓内科など半数近くを外国人医師が占める診療領域もある。

 しかし1月27日、トランプ大統領が中東・アフリカ7ヵ国の人々の入国を禁止する大統領令に署名したことで、実際に再入国できず足止めをくらっている医師や、先行きが判らない7ヵ国出身の研修医の受け入れをためらう施設が続出。トランプ VS 連邦裁判所の成り行き次第で米国の医療の基盤が崩れる懸念が生じている。