伝え方を意識すれば、性格も変えられるのか?!坪田 瞬間的にネガティブに捉えてしまったことをそのまま放置するのではなく、「これってポジティブに言い換えるとするならばどう言えばいいのかな?」と考える訓練をしようと、先生たちによく話しているんです

坪田 もちろんです。実は僕も、個人の特性はトレーニングで変えられるものではないと思っていたんです。「三つ子の魂百まで」っていうぐらいですからね。実は、坪田塾を始めたのは、先生たちをトレーニングするのが目標だったんです。この診断テストみたいなものをいろいろやってみて、「達成者」のようなリーダー向きな人をあえて結構採用してみたんですよ、20人ぐらい。そして、タイプが全く違う「調停者」タイプも一人採用してみたんですね。そして、皆に「リーダーになりたい人は?」と聞いてみたら、その調停者タイプの人だけ手を挙げなかった。だから逆にその人をリーダーにしてみようって。彼がリーダーとして成功できたら、どんな組織でも、リーダーは育成できると思って。

佐々木 へ~!その方は変わりましたか?

坪田 変わりました。もちろん本人が望まなかったら難しいとは思うんですが、本人が望めば、後はトレーニングと環境で絶対変えられます。

考え方をリフレーミングしてポジティブに言い換えてみる

佐々木 「楽天家」の要素は、どう伸ばせばいいでしょう?

坪田 考え方をリフレーミング(出来事の枠組みを変える)することです。堅実傾向が強い方は、「私、根がネガティブなんですよ」という方が多いんです。でも、それは実は正しくて、生物って基本的に根がネガティブなんです。人間の脳の中にある扁桃体の中にセンサーがあって、不安や危険を感じると無条件に反応するんです。一方で、前頭葉では論理的に思考することができる。だから、扁桃体で思わずネガティブに反応したことを、前頭葉で切り替え、ポジティブに言い換えるのです。例えばですが、僕はすごく脚が短いんですが…。

佐々木 いえいえ、そんな(笑)。

坪田 僕の親戚に世界的な名医がいるんです。以前足をけがした時にレントゲンを撮ってもらったんですが、それを食い入るように見ているから何かすごい問題でも見つかったのか…と不安に思っていたら、彼は「足、短っ!」って(笑)。その後、定規で測り始めて、それでも「これは短いわ!」って。何千、何万症例を見てきている医者が驚くほど、足が短いんですよ。この場合の「足が短い」をポジティブに言い換えるとしたら、なんて言います?

佐々木 ええっ!?なんでしょう…うーん、「足の回転が速い」とか?

坪田 さすがです!確かに僕、足の回転が速くて「忍者みたい」って言われていましたもの。…ほかに言いかえるとすれば、「重心が低くて安定している」とか、以前言われて秀逸だなと思ったのは「ズボンに使う布が少なくてエコですね」(笑)。「エコノミークラスに乗っているのに、ビジネスクラスに感じられる」なんてのもありましたね。

佐々木 それはポジティブなんでしょうか(笑)。

坪田 これを普段のシーンに置き換えると…例えば、子どもが数学のテストで0点を取ってきたら、多くの親御さんは扁桃体がピカピカ反応してしまって、「なんだこの点数は!?」と怒鳴り、責めたりしがちなんですが、ポジティブに切り替えれば「伸びしろがあと100点分あるよね」とも言えるし、「ほかの教科よりも、ちょっと勉強しただけで点数がぐんと上がりそうだよね」ということもできる。

佐々木 すごく前向きに変わりましたね。

坪田 どんな物事でも必ず多面性があって、そのなかの「ネガティブな面」は扁桃体が即座にピックアップしてしまうんだけど、ポジティブな面を思考して考える習慣をつけようということ。初めから完璧にできるはずありませんが、瞬間的にネガティブに捉えてしまったことをそのまま放置するのではなく、「これってポジティブに言い換えるとするならばどう言えばいいのかな?」と考える訓練をしようと、先生たちによく話しているんです。

佐々木 なるほど。

坪田 楽天的な要素よりも堅実な要素が強いと、自分に100点をなかなか出さないんですよね。周囲から見れば100点だということでも、いやまだ80点だからもっと上を目指さないと…と頑張る。悪いことではないのですが、組織運営という観点で言えば、「いつまでも部下を認められない上司」になってしまいがちなんです。普段からポジティブに言い換えるトレーニングをすれば、部下のいいところが見えるようになり、楽天家要素を高められる。もともとリーダー適性が高いタイプだから、組織がうまく回るようになり、成長・拡大していくと思います。