老人ホームは、コストのおよそ50から70パーセントを人件費が占める労働集約産業です。したがって、そこに働くスタッフが一丸となってやる気満々でいきいきと働けるか、そうでないかによって、ホームの雰囲気だけでなく、ホームの経営にも雲泥の差が出ます。ホーム経営の要は、あくまで施設長なのです。

(2)介護リーダーの能力

 ホーム経営の要は施設長であり、施設長が優れていれば、そのホームの運営は、おおよそうまくいくと言ってよいでしょう。しかし、規模が大きめで、スタッフの数が多くなると、いくら施設長が優れていても、現場レベルでは入居者への対応がうまくいっていないケースもあります。

 こうした現場レベルでのサービスの質をチェックするには、「現場のリーダー」の力量を知ることです。そのためには介護棟であれば、フロアリーダー、または介護サービス部門のリーダーに直接会って、そのホームにおける介護サービスの考え方、認知症の人への対応方法などを聴くことが役に立ちます。

 この際に重要なのは、介護リーダーと他の介護スタッフとの人間関係がうまくできているかの確認です。こうした確認は短時間の見学では難しいので、体験入居をできれば数日行ない、リーダーと他のスタッフとのやりとりを観察するとわかるようになります。

(3)入居率

 老人ホームの質を評価するための尺度は数多くありますが、そのなかでも最もわかりやすいのは入居率です。入居率は、そのホームの定員(全戸数)に対して何人(何戸)入居しているかの割合です。

 一般に入居率が70から85パーセント以上であれば、施設の経営上は問題ありません。入居率が常に85パーセント以上で安定しているところは、仮に入居者の死亡などで欠員が生じてもすぐに新規の入居者があります。これは「あそこなら安心だ」という評判が潜在入居者のなかでできあがっているからです。

 逆に、開所後2年以上経過して入居率が50パーセント以下だと、その施設単体での経営は苦しいので、経営母体に体力がない場合は要注意です。「客の入っていないレストランには入るな」というのと同じです。

 見学に行った際、「このホームの入居率はどの位ですか?」と確認してみてください。その質問に即座にきちんと答えられないところは、入居率が低いからだと考えて注意してください。