わずか30数年で8兆円企業を誕生させたソフトバンク。それが可能だったのは、PDCAを超スピードで回す「高速PDCA」の手法があったからだ。
ソフトバンクでは、この「高速PDCA」を回すために3つのことを大切にしていた。
果たしてその3つとは?9年にわたり孫社長の右腕として活躍した元ソフトバンク社長室長・三木雄信氏の話題の新刊『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA』から一部抜粋して紹介する。

なぜソフトバンクは他の会社と違うのか?

 ソフトバンクという会社をひと言で表すなら、ズバリこうなるでしょう。

ソフトバンクが一番大切にしている<br />「あること」とは?三木雄信(みき・たけのぶ)
1972年、福岡県生まれ。東京大学経済学部卒業。三菱地所(株)を経てソフトバンク(株)に入社。ソフトバンク社長室長に就任。孫正義氏のもとで、プロジェクトマネージャーとして活躍。また、一連の事業を通して「高速PDCA」の土台を構築する。
2006年に独立後、ラーニング・テクノロジー企業「トライオン株式会社」を設立。1年で使える英語をマスターするOne Year English プログラム〈TORAIZ〉を運営し、高い注目を集めている。
多数のプロジェクトを同時に手がけながらも、ソフトバンク時代に培った「高速PDCA」を駆使し、現在は社員とともに、ほぼ毎日「残業ゼロ」。高い生産性と圧倒的なスピードで仕事をこなし、ビジネスとプライベートの両方を充実させることに成功している。
最新刊『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA』(ダイヤモンド社)が絶賛発売中。

「圧倒的なスピードで世界のトップ企業になった会社」

 それは、「前例のないことへの挑戦をひたすら繰り返す」、そうすることで可能でした。

 たとえば1990年代には、「Yahoo!JAPAN」を設立して国内でいち早く検索サービスを開始しました。2000年代にはADSL事業に破格の料金設定で参入して、日本国内にブロードバンドを一気に普及させました。2008年にはiPhoneを日本で初めて独占販売し、それまでガラケーが主流だった日本の携帯電話市場を一変させます。

 最近では、さまざまなお店でロボットの「Pepper」を見かける機会も増えましたが、これもソフトバンクが開発しました。少し前まで「ロボットが接客するなんて、SFの世界の話じゃないの?」と思っていた人も多いと思いますが、今では特に珍しい光景ではありません。

「日本企業はなかなかイノベーションを起こせない」と言われる中、なぜソフトバンクだけがハイスピードで革新的な事業を展開し続けることができるのか。

 それは簡単です。ソフトバンクは、許容できる範囲のリスクでできるすべてのことを、片っ端からやっているからです。

 一般の人々が目にするのは、「ADSL事業で500万人のユーザーを獲得した」「iPhoneを爆発的にヒットさせた」といった大きな成功だけです。ニュースなどで報じられる情報だけを見れば、ソフトバンクはいきなり大きな目標にチャレンジして、一気に成功を掴んだように見えるでしょう。

 しかし、それは大きな誤解です。

 これらの結果はいわば最終ゴールであり、そこに到達するまでに「さまざまな手段や手法を試し、小さな成功や失敗を積み上げながら、大きなゴールへ到達する」というプロセスを経ています。

 華やかな成功の裏で、実に多くの事業が潰れています。私も正確にどれだけの事業が頓挫したのかはわかりません。

 各事業の中でも、さまざまな手段を試してきました。たとえば、ADSL事業では、契約件数を増やすために、日本中のさまざまなテナントでパラソルを立ててモデムを配ったり、目があった人には誰かれ構わずモデムを渡したり、別の商品とセット販売をしてみたりと、いろいろな方法を試しました。

 iPhoneの独占販売権も、いきなり獲得できたわけではありません。その何年も前から、ソフトバンクの携帯電話とiPodをセットで販売したり、ソフトバンクモバイルのロゴをiPodのイメージカラーと同じ「白地+銀色」に変更したりと思いつく限りのことをして、アップル社に対して関係をつくっています。だからこそ、スティーブ・ジョブズの信頼を勝ち取り、ビジネスパートナーとして選ばれることができました。