大震災の影響により海外で増す「日本リスク」
一方で「世界経済の勝者は日本」という声も

 今回の大震災の悪影響は、依然わが国を覆っている。原発事故は、状況が明らかになるにつれ、次第に深刻さを増している。一時期、わが国経済を潤していたアジア諸国を中心とした外国人観光客の足は、このところばったり止まっている。

 東北地方に展開している生産拠点は、設備や建屋の復旧に加えて、電力供給の制限などのハンディキャップを背負うことになる。3月決算ができない企業もあると聞く。

 一方、明るいニュースもある。生産活動の低下によって、わが国の世界における地位が決して低くないことが明らかになったことだ。それは、わが国企業が生産する自動車部品やIT関連の部材がないと、欧米の一部企業の工場が操業を停止せざるを得なかったことからもわかる。ある海外メディアには、「世界経済のグローバル化の勝者は日本だったかもしれない」という記事まである。

 すでにわが国は、少しずつではあるが復興に向けて動き出している。企業はできることから手をつけ出しており、人々にも少しだが落ち着きが見え始めている。国の心を1つにしようという動きも目立っている。何とも頼もしい限りだ。

 一方、政治の機能には失望することが多い。復興のための財源についても、予算の中での必要性の優先順位が不明確だ。何をしようとしているのか、よくわからない。政治に多くを期待することはできない。

 ロンドンにいる友人は、「日本の最大のリスク要因は政治だ」と指摘していた。政治には、せめてわが国の復興を邪魔しないで欲しい。そうでないと、企業も国民も、日本を見限ってしまうことが懸念されるからだ。

 今回の大震災によって、我々はわが国が抱える“日本リスク”を身に染みて感じることになった。中でも重要なファクターの1つは、地震や津波などの天災が多発する国でありながら、それに対する備えが十分ではなかったことだ。