安倍晋三首相とドナルド・トランプ米大統領による、初の日米首脳会談が行われた。「日米同盟」と「経済問題」が2大テーマとなったが、両首脳は沖縄県・尖閣諸島が米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象であると確認し、中国の海洋進出を念頭に力による現状変更の試みに反対することも申し合わせた。トランプ大統領は、就任前に発言した「在日米軍駐留経費の問題」について言及しなかった。

 経済問題では、麻生太郎副総理・財務相とマイク・ペンス副大統領による対話の枠組みを新設し、財政政策や金融政策から貿易や投資など広範な分野で包括的に議論することで合意した。米側から、「対日貿易赤字」や「円安」について具体的な要求はなかった。

 この連載では、トランプ大統領の「就任最初の100日間」は、これまでの放言・暴言の一体なにが実現できて、なにが実現できないのかを見極めればいいが、尖閣近海での中国の軍事的拡大を止めることだけは、なりふり構わずトランプ政権にアピールすべきだと主張してきた(第149回・p5)。その意味で、今回の日米首脳会談は「合格点」だといえる。しかし、本当に重要なのは、「100日間」が過ぎた後、どうするかである。

安全保障は「満額回答」
トランプ政権は地政学的戦略を理解

 米大統領選の期間中、トランプ氏は日米安保体制について、「アメリカが一歩引いても、日本は自ら防衛できるだろう。(中略)他国がアメリカを攻撃しても、日本はアメリカを助けなくてよい。なのに、他国が日本を攻撃したら、アメリカは日本を助けなければならない」と批判し、「在日駐留軍の経費を日本に負担させる」と強く主張していた(第145回・p2)。

 しかし、トランプ政権が発足すると、その姿勢は一変した。日米首脳会談に先立って、ジェームズ・マティス国防長官が来日して、稲田朋美防衛相と会談し、日本の負担は「他国のモデル」だと持ち上げた。首脳会談では、トランプ大統領がこの問題を取り上げず、「私たちの軍を受け入れてくれている日本国民に感謝したい」と述べた。両首脳は日米同盟の強化で一致し、米国の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が沖縄県の尖閣諸島に適用されることを確認した。安全保障に関しては、安倍首相はトランプ大統領から、まさに「満額回答」を得たといえる。

 この連載では、国際社会が「ブロック化」という大きな転換点にあると指摘してきた(第134回第142回など)。そして、「ブロック化」で日本の最大の懸念材料となるのは、中国の軍事的拡大であるのはいうまでもない。

 毎日のように中国の船が南シナ海や尖閣近海で展開するニュースが流れるのは、全く穏やかではないし、いつ中国が本格的に尖閣を取り戻そうとしてくるのか、不安で仕方がない。これが日本国民の持つ「普通の感覚」だ。