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宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

ユーロ崩壊は仏大統領戦で極右勝利でも起こり得ない理由

宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
【第55回】 2017年2月15日
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 経済の研究をしていると、つくづく経済の歴史は政治的だと感じることが多い。特に欧州の経済統合・ユーロについてはそうだ。カナダ人の経済学者ロバート・マンデルの「最適通貨圏の理論」をベースとして、経済統合を進め、ユーロを誕生させたということになっている(マンデル先生はその後ノーベル経済学賞を受賞)。

 最適通貨圏の理論では、圏内の各国は経済的に同レベルであることが基本だ。しかし、最近の移民問題にしても、南欧危機を見てもわかるが、現実はそうではない。欧州統合は、そもそも政治的な動きなのである。

 以前、ドイツは西と東に分断されていた。通貨・国際金融を勉強した方はわかると思うが、かつて西ドイツの通貨マルクは、ドイツの中央銀行ブンデスバンクの厳格な管理により「世界最強の通貨」と呼ばれ、西ドイツの誇りといっても過言ではなかった。一方でフランスフランやイタリアリラなど、ラテン系諸国の通貨は人為的に通貨量を増加させて為替レートを引き下げ、通貨の信任を失っていた。西ドイツはそのようなラテンの通貨と最強のマルクを統合することはしたくなかった。

 そこで、フランスは政治的な駆け引きに出た。東西に引き裂かれたドイツには、東西ドイツの再統一という国民(国家)的な悲願があった。フランスは東西ドイツの再統一とユーロ導入(マルクの廃棄)を交換条件にした。通貨を捨てるということは、感情的には国旗を捨てることに近いと筆者は考えている。

 西ドイツは東西ドイツ統合とユーロへの道を選び、1990年にドイツは統一。東ドイツ経済救済のため、実際の価値は西ドイツマルクの4分の1といわれた東ドイツマルクとの交換レートを、政治的に1対1に設定した。その後、1991年に欧州連合条約(マーストリヒト条約)が合意され、附帯議定書で単一通貨ユーロの創設を定めた。

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宿輪純一[経済学博士・エコノミスト]

しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」(下記ご参照)を主催し、4月で11周年、開催は220回を超え、会員は“1万2000人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から『通貨経済学入門(第2版)』、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『金融が支える日本経済』(共著)、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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「円安は日本にとってよいことなんでしょうか?」「日本の財政再建はどうして進まないのでしょうか」。社会人から学生、主婦まで1万人以上のメンバーを持つ「宿輪ゼミ」では、経済・金融の素朴な質問に。宿輪純一先生が、やさしく、ていねいに、その本質を事例をまじえながら講義しています。この連載は、宿輪ゼミのエッセンスを再現し、世界経済の動きや日本経済の課題に関わる一番ホットなトピックをわかりやすく解説します。

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