[東京 14日 ロイター] - 三井住友トラスト・ホールディングス<8309.T>が体制刷新を図ることになった。背中を押したのは、昨年の金融庁検査だ。ガバナンスのぜい弱性とビジネスモデルの見直しを指摘され、同社は受け入れざるを得なくなった。

今後は、専業信託銀行としてどのようなビジネスモデルを再構築するのかが問われることになる。

<金融庁の指摘>

金融庁検査で指摘されたのは2点。1つはガバナンスのぜい弱性。もう1点が、唯一の専業信託銀行にもかかわらず、信託業務をおろそかにしているのではないかとの懸念だ。

三井住友トラストは、持ち株会社トップを旧中央三井トラスト・ホールディングス出身の北村邦太郎社長が務め、傘下の三井住友信託銀行を旧住友信託銀行出身の常陰均信託銀社長が指揮する体制で進めてきた。本来は持ち株会社が傘下銀行を監督する仕組みのはずだが、金融庁は「実質的にグループ全体を支配しているのは常陰社長」として、改善を求めてきた。

ただ、日興アセットマネジメントや米シティグループのクレジットカード事業買収などは、常陰社長のリーダーシップの成果でもある。実際、「常陰社長の指導力があったからこそ、メガと闘うことができた」(外資系運用会社ファンドマネージャー)との評価もある。

新体制では常陰社長は、北村社長とともに銀行の会長に就く。銀行に2人の会長を置くのは異例だが、委員会設置会社制に移行すれば、グループの中心的役割を果たすのは持ち株会社だ。「持ち株会社は会長を置かず、社長がトップだ。社外取締役を議長に置くので、取締役会の監督機能という面では議長を中心に回す」(北村HD社長)という。

常陰社長は会見で「グループ内で信託銀行の占める割合が高く、持ち株会社と銀行の機能分担が、やや不明確な部分があった」とした上で、「委員会設置会社への移行により、ガバナンスの透明度がより上がると思っている」と語った。

<新たなビジネスモデルを築けるか>

残る課題は、信託ビジネスの強化策だ。金融庁には「専業信託とは言いながら、商業銀行業務の拡大に走ってきた。もっと信託ビジネスに力を入れてほしい」(幹部)との問題意識がある。

実際、長引く低金利環境により、商業銀行業務が頭打ちになっているのも事実。橋本勝・次期信託銀社長は「収益を下支えしたバンキング業務の資金利益が減少する中、安定的な収益を稼ぐ筋肉質な事業ポートフォーリオの構築を進める」と述べ、信託業務による手数料ビジネスにかじを切る方針を示した。

大久保哲夫・次期HD社長は、信託銀行から運用部門を切り離し、グループの資産運用子会社、三井住友トラスト・アセットマネジメントとの統合を検討していることを明らかにした。利益相反管理の強化とともに、統合による運用力の引き上げも狙う。

しかし、金融庁の狙いとは裏腹に、低金利は世界的な現象として進んでおり、運用環境も厳しさを増している。さらに金融庁が求めるフィディーシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の徹底は、手数料の引き下げ競争にも直面しかねない。

大久保次期HD社長は会見で「自主独立の専業信託であることが、レゾンデートル(存在価値)」と語ったが、新体制が独自のビジネスモデルを編み出せるかどうかが問われる。

(布施太郎 編集:田巻一彦)