[ニューヨーク 13日 ロイター] - イスラム圏7か国からの入国禁止を定めたトランプ政権の大統領令について、米西部ワシントン州のファーガソン司法長官は「真の動機」を究明すると約束した。米大統領による国家安全保障上の決定を巡る、前代未聞の公開調査に発展する可能性が出てきた。

大統領令を違憲としてワシントン州などが起こした訴訟で、サンフランシスコ連邦高裁は9日、一審の連邦地裁が出した大統領令の一時差し止め命令を支持する決定を下した。

連邦高裁はこの中で、「政府の行動が差別的な目的に動機付けられたものかどうかを見定めるため、政策決定者の発言を含む、政策意図についての状況証拠を考慮してよい」とした過去の判例を引用した。

トランプ政権は大統領令について、潜在的なテロリストの入国を防ぐのが目的であり、特定の宗教に言及していないため差別的ではないと反論している。

ファーガソン司法長官は12日、大統領令が憲法に反してイスラム教を差別している証拠を示す、政権幹部らの文書や電子メールの入手に力を入れると表明し、幹部らに証言を求める意向も示した。

裁判所は未知の領域に踏み込むことになるかもしれない。

ジョージ・W・ブッシュ元政権下で司法省の弁護士を務めたジョン・ユー氏は「動機を探るという考え方が、大統領に適用された前例は無い。大統領と行政機関全体の行動に対する司法の監視を、著しく拡大することになる」と言う。ユー氏は現在、カリフォルニア大バークレー校の教授。

<選挙期間中の発言>

米国の裁判所は伝統的に、法律の背後にある動機の調査には慎重だった。ただし人種および宗教上の差別については、時として意図の調査を認めた例がある。

例えば1993年、最高裁は、動物を生贄にすることを禁じたフロリダ州ハイアリアの法令について、表面上は中立的だが、実際には生贄の儀式を行うサンテリア教会に対する差別を意図しているとの判断を下した。

テュレーン大の憲法学教授、ステイーブン・グリフィン氏は、こうした判例に照らせば、裁判所が大統領令の文言以外の証拠まで考慮できるのは明らかだと見ている。

トランプ氏の発言のどこまでを証拠として認めるべきかが一つの争点となりそうだ。

グリフィン氏は「選挙戦の証拠も使うことが認められれば、ワシントン州側が非常に有利になる」と言う。

トランプ氏は2015年12月、カリフォルニア州サンバーナデイーノでの銃乱射事件後、真相解明までイスラム教徒の入国を完全に禁じるべきだと発言。その後、テロの実績のある地域からの入国禁止だけを支持すると述べた。

スタンフォード大ロー・スクールのマイケル・マコネル教授は、トランプ氏が憲法への支持を宣誓したのは大統領就任後であるため、裁判所は選挙期間中の発言を考慮すべきではない、との考えだ。

ワシントン州側は、トランプ氏が大統領令に署名した日のインタビューで、難民の受け入れでは中東のキリスト教徒を優先すると述べた点を指摘している。

<証言>

州側が大統領の顧問や、場合によっては大統領自身の証言を求めることの可否についても、法律専門家の意見が分かれている。フォーダム大の憲法学者、トーマス・リー氏は、政府側は大統領その他幹部を召喚から守る大統領特権を持ち出すと予想する。

法律専門家によると、ジュリアーニ元ニューヨーク市長に対する証言要請なら、政権幹部よりも容易かもしれない。元市長はフォックス・ニュースに対し、イスラム教徒の入国禁止を合法化する方法を探る委員会の設置をトランプ氏から求められたと明かしている。

法律事務所ボイ・シラー・フレクスナーのパートナー、デービッド・プレスマン氏によると、行政機関が国家安全保障上の政策立案を目的に情報を収集できるよう、行政を司法の追及から守る規定は存在する。ただ今回の大統領令にこれが適用できるかどうかは明確ではないという。

裁判の次の展開はまだはっきりしていない。

トランプ政権は最高裁への上訴を検討中としているが、サンフランシスコ連邦高裁自体が判事の数を増やして再審を行う可能性もある。トランプ氏は大統領令を新しいものと置き換える可能性にも言及しており、その場合には法廷闘争が終結するかもしれない。

(Andrew Chung記者 Mica Rosenberg記者)