経営×経理

経理を情報の「倉庫業」から
「製造業」、やがて「サービス業」へ

河江 とはいえ、企業によって経理のやり方やレベルは違いますよね?どの会社でも決算早期化が有効である理由はどこにあるのですか?

武田 次の図を見てください。経理部が仕訳をして終わりという会社を、私は「情報の倉庫業」と呼んでいます。これでは経理部が新たな価値を生むことはできません。ですからまずは、少なくとも経理部が付加価値のある情報を経営者に発信できる「情報の製造業」に進化させることを目指します。そして、「情報の製造業」からさらに進化した「情報のサービス業」に経理部を変革させることが、私の目指す到達点です。

河江 最終段階の「情報のサービス業」とは、どんな経理部の状態を指すのですか?

武田 経理部は会社の数字を全て握っている部署です。ただ単に決算数字を発表するだけでは、役割を果たしたことになりません。たとえば利益が10億円出たとき、経営者に単に「10億円でした」と伝えるのではなく、「なぜ10億円になったのか」を分析する。「過去のどんな対策が効いてこの結果が出たのか?」「5億円や20億円ではなかった理由は何か?」「将来向かうべき方向と目指すべき数字は何か?」「そのときに潜んでいるリスクは何か?」など、過去、現在、未来のストーリーを含めた情報を経営者に伝えることが本来の経理部の仕事です。それを私は「真の経理部」と呼んでいます。

河江 なぜ経理部が「情報の倉庫業」のままになっている企業が多いのでしょうか。

武田 そこは経営者の意識の問題が大きいと感じます。経理部を「利益を生まない部署」だと決めつけ、記帳や申告だけやっていればいいと考えている経営者がいまだに多いのです。上場企業でも、そういう会社は少なくありません。

河江 経営者は経理部に「作業」としての記帳や申告業務だけをやらせていて、経営に役立つ情報を取ろうという意識を持っていないということですね。そうした会社に対しては、どのようにアプローチされるのでしょうか。

武田 私に依頼があるのは、経理部が「情報の倉庫業」になっている会社がほとんどです。だからまずコンサルティングの現場では、具体策を提案する前に、経営者と経理部員全員を集めて、今のような話をします。「少なくとも情報の製造業になって付加価値を生み出さないと経理部の存在意義がなくなり、あなた方は全員いらなくなる」と言い切ります。多額の人件費をかけて経理部という部署を置く意味を考えていただきたいのです。

河江 経営者と経理部全員が一堂に会することに意味があるわけですね。

武田 経理部が、決算書を分析し経営に役立つ情報を見つけて経営者に感謝されるべき部署だと言うと、「モチベーションが上がった」と言われるケースが多いです。

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土井貴達 どい たかみち

1973年生まれ。関西大学商学部卒。公認会計士・税理士。 土井公認会計士・税理士事務所代表。2012年に大手監査法人金融部を退所し、独立。 監査法人勤務時代に実施していた取引先企業への貸付金、有価証券の査定業務に係る監査、 コンサルティング業務などを通じてあらゆる業種に精通。 独立後も、企業融資のサポートを得意としている。 独立直後からクラウド会計の導入を始め、クライアント企業への導入サポートは数十社に及ぶ。

米津良治 よねづ りょうじ

1983年生まれ。上智大学法学部卒。税理士。税理士法人ファーサイト・パートナー。上場企業にてIR職、経理職等を経て現職。企業勤務時代に社内横断の業務プロセス改善プロジェクトの中心メンバーとして活動したことをきっかけに、業務効率化にこだわりを持つ。早くからクラウド会計の優位性に着目し、研究を開始。わずか1年で30社以上のクライアントにクラウド会計を導入した実績を持つ。

河江健史 かわえ けんじ

1979年生まれ。早稲田大学商学部卒。公認会計士。河江健史会計事務所代表、FYI株式会社代表取締役。 監査法人、証券取引等監視委員会等での勤務を経て現職。 「クラウド会計は人材不足に悩む中小企業の救世主」という思いのもと、クライアントへの導入を進める。 主な共著に『リスクマネジメントとしての内部通報制度:通報窓口担当者のための実務Q&A』(税務経理協会)、 『国税庁「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組み」徹底対応 税務コンプライアンスの実務』(清文社)、 『インドネシアのことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版社)などがある。


「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?

2012年頃に登場し、わずか5年で100万社以上の企業が導入している「クラウド会計」。GmailやDropboxがあたりまえのようにビジネスの現場に普及しているように、今後、会計・請求・給与・経費精算などのバックオフィス系だけでなく、 顧客管理や在庫管理などあらゆる経営リソースがクラウド化していくことは間違いないと見られている。本連載では、クラウド会計をどう活用するか、企業の事例を中心に『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』(ダイヤモンド社)の著者の3人の税理士がインタビュアーとなって紹介する。

「「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?」

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