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ソーシャル グローバルトレンド
【第10回】 2017年2月21日
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武邑光裕 [クオン株式会社 取締役 兼 ベルリン支局長]

欧州クラブカルチャーはスタートアップの「苗床」 だった!

ベルリン、テクノの大聖堂、ベルクハインのエントランスに描かれたグラフィティ

世界のクラブカルチャーの頂点がベルリンのBerghain(ベルクハイン)です。旧東ベルリン発電所のタービンホールをダンスフロアに変え、夜間経済やテクノツーリズムを牽引します。そのクラブはまた、クリエイティブ経済やスタートアップを育む場なのです。欧州の3大クラブカルチャー都市、アムステルダム、ロンドン、そしてベルリンの今をレポートします。

クラブカルチャーの原点、アムステルダム

1976年のParadiso、現在は世界の著名ミュージシャンのコンサート会場として知られている Photo: Rijksdienst voor het Cultureel Erfgoed

 1967年、アムステルダムのヴレイエ・ゲメエンテ教会(Vrije Gemeente)を当時のヒッピーたちが占拠(スクワット)し、ボトムアップの音楽空間が誕生します。このクラブはParadiso(パラディソ)と呼ばれ、現在もライブハウスとして世界のミュージシャンを魅了する栄光の歴史の原点でした。後にRoXYClub 11、最近ではTrouw(*1)からDe Schoolと受け継がれてきた絶えざる革新が、アムステルダムのクラブカルチャー遺伝子なのです。

 かつてのデトロイトNYと並び、アムステルダムはテクノ音楽の中心地でした。2009年から2015年までの間、世界のクラブカルチャーを牽引してきたTrouwは、ダンスフロアだけでなく、アートギャラリーやレストランを併設した複合展開により、現代のライフスタイルが求めるクラブの刷新を先導したのです。

早くも伝説となったクラブ、Trouw Amsterdamのダンスフロア ©Trouw

 ここで言う「クラブ」とは、多彩なDJが生み出す音楽(テクノ、ハウス、EDMなど)とそれを支える優れた音響システムを持ち、制御可能な照明と100人程度の小箱から1500人以上を許容する大規模なダンス空間、アルコール販売が可能な夜間営業ライセンスを持つ社交空間のことです。

 オランダでは、多くの都市にナイト・メイヤー(夜の市長)と呼ぶ存在がいます。アムステルダム市長を筆頭に、夜間のエンターテインメント・コミュニティのために尽力する民間のメンバーは、夜間経済に関わる行政機関との健全な関係を構築します。夜間市場に生じるさまざまな問題がエスカレートする前に課題を調整し、地方自治体や警察の貴重な時間と費用を節約するのです。クラブが都市の経済活動の主要な拠点であるという認識は、欧州の共通の理解にまでなっています。

*1 アムステルダム東部のWibautstraatにあったTrouwは、元新聞印刷工場を活用した複合施設。クラブオーナーでありDJでもあるOlaf Boswijkによって創設された。Trouwは食、音楽、アートを融合し、アムステルダム市から24時間ライセンスを取得した最初のクラブだった。BoswijkはTrouwの後、新たなクラブDe Schoolを創設した。



武邑光裕(たけむら・みつひろ)[クオン株式会社 取締役 兼 ベルリン支局長]

メディア美学者。武邑塾主幹。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学情報デザイン科、同大メディア美学研究センター所長、東京大学大学院新領域創成科学研究科、札幌市立大学デザイン学部(メディアデザイン)で教授職を歴任。2015年より現職。専門はメディア美学、デジタル・アーカイヴ情報学、創造産業論、ソーシャルメディアデザイン。著書『記憶のゆくたて デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。2015年よりクオン株式会社ベルリン支局長。2016年、取締役就任。


ソーシャル グローバルトレンド

ヨーロッパ各国から様々なクリエイターやテクノロジストが集まる街、ドイツ・ベルリン。この街を訪れると、自ずとソーシャルビジネスのグローバルトレンドを垣間見ることができます。本連載では、ベルリンに在住する著者が現地で見た、ソーシャルビジネスの最前線を紹介します。

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