4月10日に行われた東京都知事選で早々に当確を打たれた石原慎太郎東京都知事は、NHKテレビのインタビューで熱弁をふるった。国民が「我欲を抑えて、自分の生活をつましくするつもりの決心をしないなら、この日本は保たない」と述べた。

 かつての『太陽の季節』の作者が、年月を経て我欲を抑制することを考えるようになるとは、それなりに結構なことだが、日本が保たなくなるとは、さて、具体的に何が起こることを指すのか、この発言だけでは分からない。

 一方、こと経済に関しては、少なくとも短期的には国民が「生活をつましくする」ことを意識すると、それこそ「保たない」のではないかということが心配になる。

 経済の場合、「保たない」というのは、生産と消費・投資が縮小して、企業の倒産が増える一方、雇用が悪化して失業が増加し、国民の生活水準が低下することだと内容を具体的に言うことができる。

 経済が悪化しても、それが短期であって、長期的に国民全体の暮らし向きが良くなるならいい選択だという立論が、前提によっては可能かも知れないが、東日本大震災からの復興が急務である現状を考えると、当面、景気の悪化は避けるべきだろう。

 石原知事は、東日本大震災の発生をうけて「生活をつましく」と言っているのか、それとも東日本大震災に関係なく、日本人がそうあるべきだと思っているのか。文脈的には、後者であるように思えるが、この路線に従った場合、折からの各種の自粛のムードと合わせて考えると、「自粛不況」を悪化させてしまう懸念がある。

 東京都の花見の宴会自粛要請について書いた先週と同じ心配で恐縮だが、東京都では、知事に改心を促すかのように花がまだ満開に近い咲きぶりを継続していることもあり、もう一度注意を促したい。