「一律25%節減」は公正な判断なのか?
「見かけ上の平等」に惑わされるな

 もちろん、政府や産業界でも様々な対策が考えられています。その主な内容は、小口需要者である一般家庭や中小企業に対しては善意の節電を呼び掛け、大口需要者である大企業が自主的に電力消費量を25%程度節減することで対応するというものです。大口需要者の需要抑制については、それを強制する法律の発動が検討されています。

 多くの経済学者はこの対策に異論を唱えています(注1)。なぜならば供給不足が生じた場合の対処方法として、現在検討されている方法では限られた資源の効率的な利用という観点から問題が多く、復興していかなければならない経済の足かせとなってしまう危険があるからです。

 限られた電力をどう配分するべきかを社会的に考えれば、社会にとって最も必要とされるものや節減が困難なものに配分し、不要不急の利用や節減が容易なものへの配分を減らせばよいということになります。しかし、復興産業や医療機関、交通や通信など必要なのが自明のものもある一方、その他大部分の電力利用に関しては実際のところ「どれが必要でどれが必要でないのか」を判定することは、非常に難しいのです。

 たとえば、現在品薄状態になっているヨーグルトや納豆の生産には電力が不可欠であるため、電力供給の減少は生産減少の直接的な要因となります。一方で、営業日や営業時間を減らしても生産や売り上げにそれほど大きな影響が出ない企業もあります。

 結果として、大口の需要者である大企業だけを対象に、一律に需要を節減させるという「見かけ上の平等」を重視した配分方法が採用されようとしています。これでは関東圏の経済活動が一律に停滞することになりかねません。そもそも夏季の電力需要の上昇は一般家庭や中小企業によるクーラーの利用によるところが大きいのに、大口の利用者である大企業にだけ節減させるのが公正な判断なのか、大いに疑問です。不要不急の電力利用を放置したまま、コントロールしやすい大企業の経済活動だけを強引に抑制すれば、復興しようとし始めた経済の足かせとなってしまいます。

(注1)早稲田大学の野口悠紀雄教授(ダイヤモンド・オンライン「未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか」第1回)、大阪大学の大竹文雄教授(「時評2011 震災復興に必要な熱い気持ちと冷静な視点」中央公論 2011年5月号)、大阪大学の八田達夫教授(「日本激震! 私の提言 送電網は新規業者に開放すべき」週刊東洋経済2011年4月9日号)、上智大学の山崎福寿教授(政策投資銀行設備投資研究所から提言予定)がそれぞれの震災への緊急提言の中で言及されています。