去る4月12日、経済産業省の原子力安全・保安院と国の原子力安全委員会は、福島原発の事故評価を、ついに「レベル7」へと引き上げた。これは、あのチェルノブイリ原発事故と並ぶ世界最悪の水準である。これにより、国民を疑心暗鬼に陥れている「放射能不安」がさらに尾を引く可能性は高い。世間で玉石混交の情報が飛び交うなか、我々は何を信じたらよいのか? 有名な医療機関や専門機関が発表している見解を改めて検証すると共に、放射能パニックの背景を覗いてみよう。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

福島原発はついに「レベル7」に
拡散する“不確か”な放射能情報

 「色もなく、匂いもない。だけど、微量かもしれないが確実に水道水に混ざっている。こんな怖いものがあるでしょうか。どんなに安全だと言われても、怖くて子どもにだけは飲ませられません」(30代・男性)

 何事も、見えない敵ほど大きく見えるというのは真理だが、今回の放射能パニックはまさしくそれにあてはまるだろう。

 安全性についてずっと議論されながらも、正確な知識を持つのは専門家などごく一部のみというのが、原子力発電所や放射能に関する現実。東日本大震災が引き起こした福島原発事故は、マスコミをはじめ、情報を発信する側と受け取る側の知識不足が様々な憶測の発生を後押しし、それを拡散させた感が否めない。

 津波被害によって電源喪失状態に陥り、必要な冷却機能を失った福島第一原発。政府と東京電力は、ポンプ車を投入するなどして燃料棒の冷却を図るも、期待したほどの効果は得られなかった。ついには注水過程で水素爆発を起こし、放射性物質の大気中への漏洩が判明した。

 有識者を含む人々は、即座にこの事態に反応。過去にチェルノブイリやスリーマイル島で起きた原発事故を引き合いに出し、今後の土壌、海洋、そして人体への影響を懸念する情報を、メディアで積極的に発信し合った。

 とりわけ議論が活発化したのがインターネットだ。災害時にソーシャルネットワークの情報網が非常に有用であったことは、すでに多くのメディアで触れられている。しかしそれは反面、デマゴギーや不確かな情報の拡散を促す一面を併せ持っているのも事実だ。「災害時に最も怖いのはデマ」とは、かつて阪神淡路大震災のときにも喧伝された言葉である。