顧客を見ることこそ
サービスの本質

 マニュアルだけに頼らず、いかにサービスを生み出すか。野地氏が取材した、とある大手飲食チェーン店の話である。

 売り上げナンバーワンを誇る店だが、その決め手となっているのは、味よりもやはりサービス。20代後半の若い店長は「お客様のクレームを聞いても、すぐに謝らないようにする」というのを信条に、なにかあった場合は客と部下それぞれから話を聞いて状況を判断することにしているという。

 その理由は、自分がアルバイトとして働いていたとき、なにも聞かずにすぐに頭を下げる上司がいたから。理由を探ろうともせずに謝るばかりでは誠意が感じられず、部下も一生懸命仕事をする気がなくなってしまうというのだ。

正しい状況を把握したうえで真摯に対応する姿勢が客と部下双方の信頼を得ることになり、結果、売り上げにつながったのだろう。

 野地氏は言う。

「その若さでそれができることこそ、マニュアルに頼っていない証拠。サービスって、“演技”じゃできないんです。100%やっているのに理不尽なクレームに対してなにも言えないのは、逆にダメなマニュアルサービスの典型でしょう」 

 この店長の逸話からもう一つ学べるのは、サービスとは決して個人本位のものではないということ。上司、ひいては組織のトップの姿勢も問われる。