一般調査と特別調査では何が違うのか

 税務署には多くの取引資料が存在している。法定調書として税務署に提出された資料や税務調査で収集した資料もたくさん存在するが、有効な資料は乏しいのが現状だ。調査官は納税者から事業の概況を聞き取り、帳簿を確認して感性を働かせてパズルを解いていくのだが、結果は調査官の実力に大きく左右されてしまう。

 このために税務署では調査を二極化している。調査を一般調査と特別調査に分けて、調査に濃淡をつけているのである。もちろん、マルサの強制調査ではないので、どちらの調査も納税者に協力を求めながら進める任意調査となる。

 しかし、一般調査と特別調査では調査内容が全く違う。一般調査は一件の調査日数が、平均で4日しか与えられていない。調査官は交付された事案を「時間の掛かる事案」と「比較的すぐ終わる事案」に分けて処理していくが、所詮、与えられた日数は4日しかない。

 統括官から調査指令を受けた調査官は、まず準備調査をする。自分なりに「調査の手引」を研究して調査内容を整理し、調査のポイントをピックアップする。そして、納税者に調査日時の連絡をして日程調整をすると、概ね1日が経過してしまう。

 次に、実際に調査場所に臨場して納税者から事業概況を聴き取り、帳簿記録の説明を受けると、また1日が経過してしまう。続いて、必要がある場合に帳簿や領収書などの書類を借受けて、税務署に持ち返って分析すると、さらに1日が経過してしまう。

 最後に是正すべき事項があれば、納税者を説得して修正申告を提出してもらい、調査書類をまとめて調査報告書を作成する。そして、修正申告に伴った加算税の処理や調査結果の入力をすると、また1日が経過してしまう。