「別の言い方をすれば、戦後の経済は一点集中でやっていくことができる時代だったんだと思うんですね。なぜなら、何が日本経済を引っ張るか、どの産業が世界に通用するかということが、ある程度わかったからです。今よりもはるかに、一点張りの確率を高めることができたということです」

 そして、預貯金を担っていた国民も、同じように日本の奇跡の経済成長に酔いしれた。自分たちのお金が使われたという自覚があるかどうかは別にして、国の戦略は見事に的中し、豊かな生活を手に入れることができるようになったからである。だからこそ、誰もが疑いなく、さらに預貯金に励むことになった。

 経済復興のために、当時の日本にはお金が必要だったのだ。だから、その価値あるお金には、しっかり〝お礼〟がついた。預貯金金利は、今では考えられない高さだった。実際、経済成長を遂げている時代は、預貯金金利は3パーセント、5パーセントなどという水準が当たり前だった。100万円を一年間、銀行に置いておくと、金利で5万円も増えている(1000万円なら1年間で50万円!)、などという時代がかつてはあったのである。