超円高から円安に振れ、また円高に?
投資家の理解が及ばない震災後の為替相場

 3月11日の大震災の後、一旦為替市場では円が買い上げられた。大震災によって、わが国経済が痛手を受けることを考えると、本来、円は売り込まれてもおかしくない。

 ところが、海外に向かったわが国の投資資金が、大震災をきっかけにわが国に戻る(リパトリエーション)との思惑が働き、ヘッジファンドなどの投機筋も一斉に円買いに向かった。その結果、3月17日、円は史上最高値の76円25銭まで上昇した。

 しかし、翌日になると予期せぬ出来事が発生した。G7財務相と中央銀行総裁が急遽電話会議を開き、円売りの協調介入で合意したのである。介入は即日実行された。それは、円買いを仕掛けた投機筋にとっては、まさに“寝耳に水”の出来事だった。

 介入をきっかけに、ヘッジファンドなどは一気に円売りに動いた。それによって、円高の流れが一服し、欧州中央銀行の利上げなどもあり、今度は円安方向に動き始めた。

 ただ、協調介入をきっかけにした円安の動きは、足もとで勢いを失い、再び円高圧力が強まりつつある。大震災以降、一般投資家にとっては理由がわかりづらい為替の状況が続いているのは、なぜだろうか? その背景には、欧米諸国の経済回復に対する確信が持てないことがある。

 短期的には、為替は金利の動きに連動することが多い。欧米の景気回復が確かなものになり、これからも金利上昇が見込めると、金融緩和が続くわが国との金利差が拡大し、円は売られやすくなる。

 問題は、欧米諸国の景気回復に確信が持てないことだ。わが国や欧米諸国の景気の本格的な回復が見込めないうちは、為替相場は方向性のつかみにくい展開になる可能性が高い。