「おいおい、このチェックマークが入ったロットがリジェクト(不良)品かい? 結構あるじゃないか」

「大体10パーセントというところかな」

「冗談じゃない、それじゃ商売にならないよ」

 リムが屈み込んでリジェクト品の山の一つを自分で確認し始める。板を数枚めくって目を走らせると、批判がましく大きな声を出した。

「おいおい、これのどこが不良なんだ?」

 幸一は、またいつものゴリ押しが始まったな、と顔をしかめつつ彼の傍へと近付いた。

「これは巾の歩切れだ」

 そう言って手にしたメジャーを当てて指し示す。

「ほら、100ミリもないじゃないか」

「じゃあ、これは何だ?」

 リムが別の板を持ち上げた。

「よく見てくれよ。フラットソーン(板目)が混じっているじゃないか」

「いや、オーダーシートではセミクオーターソーン(追い柾目)もオーケイとなっている」

 敷居には木目が真っ直ぐに通った柾目が求められる。日本の業界通を自認していたリムだが、都合のいいときにはマレーシアン・スタンダードで屁理屈をつけてくる。

「確かに少々の追い柾には目をつぶるが、見てみなよ。これは完全に木目が巻いている板目じゃないか」

 憮然とするリムを尻目に、幸一は他の不良材の解説を続けた。

「これは曲がりがひどすぎる」

 リムの目線に木口を持ち上げて指摘する。それは明らかにカーブを描いて反っていた。

「女性のボディラインとしてはいい曲線だが、敷居に使うと戸が閉まらなくなってしまうな。これは4メーター物だから、2メーターにカットすれば使えるよ」

 幸一の話に、怒った演技を続けるはずのリムも思わず吹き出してしまった。

「ハハハ、まいったね……。検品が終わったら声を掛けてくれ、食事に行こう」

 リムは観念して引き揚げて行った。

(つづく)