若いうちに失敗を恐れず
どんどん経験を積むべき

 前田さんは、著書でこれまで培ってきた「社内・社外プレゼンの資料作成術」を公開しているが、上達のポイントは十分な準備と練習、そして経験を積むことだという。

「プレゼンで緊張してしまうのは自信がないからです。準備をしっかりして、何を聞かれても答えられるようにしておけば大丈夫。また、練習を繰り返しやることも大切。最低20回は必要ですね。あとは場数をこなし、いろいろな経験を積んでください」

 ただし、プレゼンの機会は社員全員に等しく与えられるものではない。だからこそ、若手社員は失敗を恐れることなく、貪欲にチャンスをつかむべきだ。

「私がソフトバンクで初めて役員にプレゼンした時は、急用ができた上司の代役でした。いきなりの本番で話すポイントもわからないまま、自分では何とかやりきったつもりだったんですが、案の定、『結局、何が言いたいわけ?』と(笑)。でも、若いうちはこんな経験もしたほうがいい。上役になると、そういう失敗は許されませんから。場数を踏めば、だんだん慣れてきます」

 人は緊張すると早口になり、話の内容が伝わりにくくなる。「意識してゆっくり話す」くらいがちょうどいいそうだ。なかには、体を揺らしたり髪を触ったりしながら話すクセのある人もいる。自分の姿や話し方が他人にはどう見えているか、ビデオで撮って客観的に見てみるといいだろう。

社内プレゼンは
「資料9割、信頼1割」

前田さんの著書『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』はソフトバンクの役員面接で一発OKを連発した前田さんの経験とノウハウを余すところなく掲載。まさにプレゼンの極意が詰まった本

 社内プレゼンは「資料で9割決まる」そうだが、残りの1割に必要なものは何だろう?

「社内プレゼンで重要なのはロジックです。利益に貢献するか、実現可能か、企業理念に合っているかという3つのポイントを、シンプルかつロジカルに説明する資料をつくる。それが重要なことの9割。あとの1割は、最終決断をしてもらうためのワンプッシュです。決裁者は最後に、説明者を信頼していいかどうか、この提案をやり遂げることができるかどうかを見ています」

 決裁者の信頼を得るためのテクニックはいろいろあるが、それをサポートしてくれる重要なツールが、スライドを進めるリモコンの「プレゼンター」だ。

「スクリーンや手元のパソコン画面ばかり見ながらプレゼンする人がいますが、いかにも自信なさそうに見えますよね。内容が素晴らしくても、それでは『この提案はうまくいかないんじゃないか』という心証を与えてしまいます。もちろん、スライドを説明する時はスクリーンに目をやる必要がありますが、それ以外の時は決裁者から目をそらさず話すことが大切。それを可能にしてくれるのが“プレゼンター”です。相手に信頼してもらうには、プレゼンの流れを自分でコントロールすることが重要です」

 よく話の途中でパソコンを操作し、スライドを切り替えたりする人もいるが、これでは流れが中断してしまうし、忙しい決裁者にムダな時間をとらせてしまうことになる。手元でスライドを自由に操れるプレゼンターを上手に使って、プレゼンをコントロールし、ゴールまでテンポよく駆け抜けるべきだ。