経営×経理

60代でPC経験なし
ITに弱い従業員に「ある作戦」が効いた

土井貴達(どい・たかみち)
1973年生まれ。関西大学商学部卒。公認会計士・税理士。 土井公認会計士・税理士事務所代表。2012年に大手監査法人金融部を退所し、独立。 監査法人勤務時代に実施していた取引先企業への貸付金、有価証券の査定業務に係る監査、 コンサルティング業務などを通じてあらゆる業種に精通。 独立後も、企業融資のサポートを得意としている。 独立直後からクラウド会計の導入を始め、クライアント企業への導入サポートは数十社に及ぶ。共著に『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』がある。

土井会計士 とはいえ、御社は創業100年の超老舗企業です。ベテラン従業員も多い中で全社的なクラウド化を推し進めるのは、なかなかハードルが高いような気がしますが。

土井社長 今回の一連の社内業務のクラウド化については「作戦」を立てていました。20代から最年長の67歳まで、従業員全員に事前にiPadを配ったんです。まずは遊んでもらって、使い方に慣れた頃を見計らって、まずは交通費などの経費精算を、iPadを使ったクラウドシステムに全面的に切り替えました。

米津 従業員全員となると、相当コストがかかりますよね。

土井社長 はい。ただ、iPad導入には2つの狙いがあって、両方を達成できれば費用対効果は高いと踏んでいました。1つ目は、経費精算や請求書作成だけでなく、営業時のプレゼン資料作成に活用できるなど、多面的な業務改善につながること。もう1つがスキマ時間の活用です。ある営業担当者は、電車に乗っているときに、「今、見積もりや請求書をつくれるじゃないか!」と気づいたと言います。結果的に早く退社できるようになり、喜んでいました。

土井会計士 とはいえ、慣れるまでに時間がかかる人もいるでしょう。たとえば、ご年配の方が使いこなせるようになるまでには、どのくらいかかりましたか?

土井社長 パソコンを一度も使ったことがなくて、ガラケーを使っていた60代の従業員がいます。彼にはまずMacを支給してパソコンに慣れてもらい、iPadを配ったあとも、写真を撮るなどの楽しめる基本操作から始めました。そこから約半年で使いこなせるようになりましたね。

土井会計士 iPadを使って仕事をすることに、現場から反発はありませんでしたか。

土井社長 ありました。デイサービス事業の従業員には、iPadが高価なものという意識があったようで、「落として壊したらイヤだから使いたくない」という声が出たため、回収しました。全員に配っても、使わない人が出ることはあらかじめ覚悟していました。製造に関わる部門は、みな面白がって使っていました。

Special Columns

土井貴達 どい たかみち

1973年生まれ。関西大学商学部卒。公認会計士・税理士。 土井公認会計士・税理士事務所代表。2012年に大手監査法人金融部を退所し、独立。 監査法人勤務時代に実施していた取引先企業への貸付金、有価証券の査定業務に係る監査、 コンサルティング業務などを通じてあらゆる業種に精通。 独立後も、企業融資のサポートを得意としている。 独立直後からクラウド会計の導入を始め、クライアント企業への導入サポートは数十社に及ぶ。

米津良治 よねづ りょうじ

1983年生まれ。上智大学法学部卒。税理士。税理士法人ファーサイト・パートナー。上場企業にてIR職、経理職等を経て現職。企業勤務時代に社内横断の業務プロセス改善プロジェクトの中心メンバーとして活動したことをきっかけに、業務効率化にこだわりを持つ。早くからクラウド会計の優位性に着目し、研究を開始。わずか1年で30社以上のクライアントにクラウド会計を導入した実績を持つ。

河江健史 かわえ けんじ

1979年生まれ。早稲田大学商学部卒。公認会計士。河江健史会計事務所代表、FYI株式会社代表取締役。 監査法人、証券取引等監視委員会等での勤務を経て現職。 「クラウド会計は人材不足に悩む中小企業の救世主」という思いのもと、クライアントへの導入を進める。 主な共著に『リスクマネジメントとしての内部通報制度:通報窓口担当者のための実務Q&A』(税務経理協会)、 『国税庁「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組み」徹底対応 税務コンプライアンスの実務』(清文社)、 『インドネシアのことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版社)などがある。


「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?

2012年頃に登場し、わずか5年で100万社以上の企業が導入している「クラウド会計」。GmailやDropboxがあたりまえのようにビジネスの現場に普及しているように、今後、会計・請求・給与・経費精算などのバックオフィス系だけでなく、 顧客管理や在庫管理などあらゆる経営リソースがクラウド化していくことは間違いないと見られている。本連載では、クラウド会計をどう活用するか、企業の事例を中心に『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』(ダイヤモンド社)の著者の3人の税理士がインタビュアーとなって紹介する。

「「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?」

⇒バックナンバー一覧