経営×経理

クラウド会計を使うと
「数字に対する直感」が磨かれる

米津良治(よねづ・りょうじ)
1983年生まれ。上智大学法学部卒。税理士。税理士法人ファーサイト・パートナー。上場企業にてIR職、経理職等を経て現職。企業勤務時代に社内横断の業務プロセス改善プロジェクトの中心メンバーとして活動したことをきっかけに、業務効率化にこだわりを持つ。早くからクラウド会計の優位性に着目し、研究を開始。わずか1年で30社以上のクライアントにクラウド会計を導入した実績を持つ。共著に『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』がある。

米津 土井電機では、売上や利益のデータを全社員で共有しているようですね。クラウド会計に切り替えたことで、その点ではメリットはありましたか?

土井社長 週に1度、幹部を集めて経営会議を開き、クラウド会計や現場から出て来た自部門の数字を発表させ、全社で共有しています。クラウド会計を入れたことでその数字が精緻化されたため、それまでは売上や営業利益の見込みが「当てずっぽう」になっていたものが、95%以上の確率で予測できるようになりました。これは弊社の経験知ですが、現状が明確に数値化できれば、次に打つ手を各自が考えるようになります。幹部の当事者意識が高まり、責任感をもって経営にコミットするようになったのです。

河江 決算データは、どこに重点を置いて確認されているのですか?

土井社長 昨年対比です。前年同月はもちろん、当月までの累計も必ず昨年対比で見ます。前年との違いを正確につかむと、対策が立てやすくなります。

土井会計士 会計データを全従業員に共有することを躊躇する経営者も多いのですが、どのような狙いがあったのでしょうか。

土井社長 経営の透明性を上げ、全員で経営の数字を知らせるためです。いずれすべての会社数値を公開し、これまでの給料額なども個別に本人に見せるつもりです。現状、人件費は部署ごとの金額だけを公開していますが、すでに費用配分に関して部署間で調整が始まっています。たとえば1人採用してしばらく経つと、「この人の仕事内容から考えてうちの部署にこんなに費用が回ってくるのはおかしい」などと議論が始まるのです。みんなが数字に強くなって議論が生まれることは、私がもともと期待していたところです。

米津 中小企業の場合、売上はまだしも、利益については自分の責任ではないと思っている幹部も結構いると感じます。

土井社長 私が社長になった時点では、「粗利」と「営業利益」の違いを理解していない幹部が多くて驚きました。会議では目標値と昨年対比、現実の数字を読み上げさせていますが、それを繰り返すだけでも、だんだん「数字の感覚」が身についてきます。昨年対比で落ち込みがあれば、それを読み上げている本人は、その原因がどこにあるか、ピンときているはずです。クラウド会計活用の副次的なメリットとして「数字に対する直感力を磨ける」という点は大きかったですね。

Special Columns

土井貴達 どい たかみち

1973年生まれ。関西大学商学部卒。公認会計士・税理士。 土井公認会計士・税理士事務所代表。2012年に大手監査法人金融部を退所し、独立。 監査法人勤務時代に実施していた取引先企業への貸付金、有価証券の査定業務に係る監査、 コンサルティング業務などを通じてあらゆる業種に精通。 独立後も、企業融資のサポートを得意としている。 独立直後からクラウド会計の導入を始め、クライアント企業への導入サポートは数十社に及ぶ。

米津良治 よねづ りょうじ

1983年生まれ。上智大学法学部卒。税理士。税理士法人ファーサイト・パートナー。上場企業にてIR職、経理職等を経て現職。企業勤務時代に社内横断の業務プロセス改善プロジェクトの中心メンバーとして活動したことをきっかけに、業務効率化にこだわりを持つ。早くからクラウド会計の優位性に着目し、研究を開始。わずか1年で30社以上のクライアントにクラウド会計を導入した実績を持つ。

河江健史 かわえ けんじ

1979年生まれ。早稲田大学商学部卒。公認会計士。河江健史会計事務所代表、FYI株式会社代表取締役。 監査法人、証券取引等監視委員会等での勤務を経て現職。 「クラウド会計は人材不足に悩む中小企業の救世主」という思いのもと、クライアントへの導入を進める。 主な共著に『リスクマネジメントとしての内部通報制度:通報窓口担当者のための実務Q&A』(税務経理協会)、 『国税庁「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組み」徹底対応 税務コンプライアンスの実務』(清文社)、 『インドネシアのことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版社)などがある。


「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?

2012年頃に登場し、わずか5年で100万社以上の企業が導入している「クラウド会計」。GmailやDropboxがあたりまえのようにビジネスの現場に普及しているように、今後、会計・請求・給与・経費精算などのバックオフィス系だけでなく、 顧客管理や在庫管理などあらゆる経営リソースがクラウド化していくことは間違いないと見られている。本連載では、クラウド会計をどう活用するか、企業の事例を中心に『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』(ダイヤモンド社)の著者の3人の税理士がインタビュアーとなって紹介する。

「「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?」

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