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(2005年11月、大連)

 「着いたのか? 2階の芙蓉の間にいる。すぐに来てくれ」

 電話の相手へ手短に応えると、清義が悪戯な目で問い掛けてきた。

 「小姐たちが来たのか?」

 頷きながら隆嗣がテーブルを見回す、岩本たちはこちらに構うことなく料理をつつきグラスを傾けながら業界話などをしている。そこへ、ノックの音が響いてきた。

 「どうぞ」隆嗣より先に清義が声を上げた。

 扉を開けて入ってきたのは、4人の麗しい女性たちだった。

 「失礼します、こんばんわ」

 先頭で挨拶をするのはスーツ姿で髪をアップにしている落ち着いた女性、どちらかと言うと着物の方が似合いそうな艶やかさを持っているが、あえて落ち着いて見せているようで、目元や首の辺りを観察すると、まだ30歳手前と思われる。

 彼女に従う3人も皆一様に若いが、ショートカットでジーンズ姿のまるで学生のような娘もいれば、ワンピースにカーディガンという日本の中年男が好みそうな清楚風のロングヘアーの娘、そして茶髪に革ジャンという活発そうな娘と、三者三様だった。

 隆嗣が手招きをして、呆然としている賓客たちに紹介する。

 「今日の仕事はもう終りです。これからは、大連を探訪する楽しい夜にしましょう。日本人向けナイトクラブのシャオジエ(小姐)たちです。片言の日本語なら話せますから、ご安心ください」

 スーツ姿のママが隆嗣のもとへ来て詫びた。

 「対不起、我来晩了(遅くなってごめんなさい)」

 「ママ、ここでは中国語禁止だよ」

 隆嗣がわざと皆に聞こえるように大きな声を出した。

 「そうですね。わたし、レイカいいます。『クラブひまわり』のママをしてます。このコたちはウチの店のナンバーワン、どうぞよろしく」

 怪しげな日本語で自己紹介をすると、ほろ酔いで調子が上がってきた宮崎が指摘した。

 「ナンバーワンだったら一人のはずだろう、3人も綺麗なお嬢さんがいるじゃないか」

 そう言って自分の言葉に笑い声を上げる宮崎を見て、岩本も安堵している。

 「どうぞ、お好みの女性を選んで日中交流をしてください」

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村上卓郎(むらかみ・たくろう)

1965年生まれ。大学在学中に中国へ留学。会社勤務にて貿易業務と海外駐在を経験。現在は独立して貿易仲介業を営む。初めて書いた『認命(レンミン)――さだめ』が第3回城山三郎経済小説大賞で最終候補に残り、選考委員から絶賛される。


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