垂直的価格制限を行う狙い

 生産者が消費者に直接販売することは稀で、その過程には多くの場合、卸や小売などの流通業者が介在している。生産者と小売業者からなる単純なチャネルを想定したとしても、両者の間での取引様式にはさまざまなものがある。

 生産者による小売業者にたいするコントロールという観点からみれば、一方の極には(出荷価格を提示するだけの)市場取引があり、他方の極には、生産者による包括的なコントロールを意味する垂直的統合がある。そしてその中間には、部分的なコントロールを目的とした多様な取引様式が存在する。

 このことの背景には、垂直的統合には多くの費用がかかるし、また市場取引のもとでは、自らの利潤極大化を行動目的とする小売業者が、生産者またはチャネル全体にとって望ましい行動をとるとは限らないという事情がある。そのため、チャネルリーダーとしての生産者は、チャネルを効率的に運営し、自らの利潤を最大にするために、小売業者の行動にたいしてさまざまな制限を加えるのである。

 小売業者は、何(商品)を、誰(顧客)に、いくら(価格)で売るかを決めるわけであるから、生産者による小売業者の行動に対する制限として、①価格設定を制限する定価制や再販売価格維持制度(再販制)、②顧客を制限するテリトリー制、③取り扱い商品を制限する専売店制や抱き合わせ契約、などが考えられる。今回は、生産者による小売価格の制限について検討する。