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自分の時間を取り戻そう
【第11回】 2017年3月15日
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ちきりん

Uberは労働者の生産性も
劇的に上げている
Uber Japan高橋正巳×ちきりん(2)

アプリでシームレスに配車ができるだけでなく、需給に応じて価格が変わるのもUberの大きな特徴です。さらに、フードデリバリーサービスの「UberEATS」(ウーバーイーツ)では、配達員志望者の殺到から、日本社会の「人手不足」の意外な裏側が見えてきて……。
人気ブロガーちきりんさんの新刊『自分の時間を取り戻そう』刊行を記念したUber Japan執行役員社長・高橋正巳さんとの特別対談第2回です。(構成:平松梨沙 撮影:梅沢香織)

Uberは日本でどんな人に使われているのか?

ちきりん Uber Japanの東京でのハイヤー配車サービスは、どんな方が使っているんですか?

高橋正巳(以下、高橋) まず目立つのは、海外の方ですね。昨年の9~11月の記録だけでも、世界70ヵ国の方が弊社のサービスを使ってくださいました。

ちきりん 70ヵ国ってすごい。でもたしかに、日常的に自国でUberのサービスを使っている海外の人にとっては、日本に来ても流しのタクシーよりUberを使うほうが圧倒的に便利ですよね。言葉が通じなくても、アプリを通して行き先を伝えられるし決済もラクだし。日本人の利用はどうですか?

高橋 やはり、ビジネスユーズが多いです。今まで固定のドライバーと契約していたようなビジネスマンが、社用車や自分で契約していた車をやめて、好きなときにUberを呼ぶというスタイルをとってくださっているんです。

ちきりん えー、そんな使い方があるんだ。社用車って大きな固定費なわけですけど、それを完全に流動費化するってことですね。

高橋 その他だと、女性の方にも好評です。Uberにはドライバーとライダー相互の評価システムがあるんですが、乗る前にドライバーの平均点も確認できます。だから安心して使っていただけるんでしょうね。ほどよい緊張感をもって車内の空間を共有することになるので、おのずとサービスのレベルが改善されていきます。

ちきりん そういえば私、タクシーに乗る時でも女性ドライバーの車が好きです。運転が丁寧で愛想もいいから。タクシーの運転手さんって、いまだにお客が乗ったときに挨拶もしない人がいて驚かされます。私なんて降りるときに大抵「ありがとうございました」とか言うんだけど、運転手は黙ってるんです。なんでこっちがお金払っているのに、挨拶もお礼もこちらから言わないといけないんだろうと(笑)。

高橋 そんなちきりんさんにこそ、ぜひUberを利用していただきたいです!

高橋正巳 (たかはし・まさみ)
Uber Japan執行役員社長 米シカゴ大学を卒業後、2003年ソニーに入社。本社、パリ勤務、INSEAD(インシアード)でのMBA取得を経てサンフランシスコでM&A案件を担当しているときにUberに出会う。2014年同社に入社し、日本法人の執行役員社長に就任。

日本のタクシー業界の生産性は……

ちきりん でも、東京に限っていえば、すでにタクシーが山ほど余ってますよね。実車率(※)って6割くらいですか? 個人ドライバーやライドシェアの推進に加え、タクシー会社そのものがUberのシステムに乗ってくれるといいと思いません? 

 ※実車率:自動車の利用効率を示す指標で、走行距離のうち旅客や貨物を載せていた距離の割合。

高橋 おっしゃるとおり、すでに東京にはたくさんのタクシー会社があります。実車率は6割もなく、走行距離に対する実車率は5割以下で、実際の生産性を計る時間ベースで見た実車率は3割くらいと聞いています。要するに、ドライバーさんが1時間勤務するうえで、20分程度しかお客さんを乗せていないということになります。

ちきりん そんな低いんだ。あまりに生産性が低すぎる……。

高橋 Uberの配車サービスは、需要と供給をオンデマンドでマッチングさせるため実車率は自ずと高くなります。

ちきりん ですよね。だったらタクシー会社のほうにも大きなメリットがある。

高橋 はい、実際にタクシー会社との提携もしています。ただ、実はUberの使われ方をいろいろな都市で見ていくと、そもそも交通のオプションがない郊外での利用も活発なんですよ。ニューヨークでいうと、クイーンズとかブロンクスとか。

ちきりん 東京でいうと、世田谷区、杉並区、国立市、多摩市あたりですかね。山手線の内側じゃなくて、住宅地中心のエリア。

高橋 そう考えるとイメージがわきやすいかもしれません。郊外では地域住民どうしでライドシェアする文化がもともとあり、Uberも浸透していきやすいというのが、海外の傾向です。

Uberの利用数世界第2位の都市であるロンドンでのUberのトリップ履歴(青色の線)。 白点が示す駅からさらに郊外に向けて利用されており、既存の交通機関がサポートできない「ラストワンマイル」にUberが利用されていることがわかる。


ちきりん なるほど。たとえ大都市であっても、郊外は都心ほどタクシーが走り回ってるわけじゃない。だとするとタクシー会社との提携だけでなく、本来のライドシェアを推進するほうが生産性が上がるというのは、東京みたいな大都市でも当てはまるってことですね。たしかにそういうエリアだと人口も多いから、「ちょっと足がほしい人」と「車も時間もあいてるし、お小遣いを稼ぎたい」みたいな人もたくさんいる。
 私は新刊でも、「生産性を上げることが人生を良いものにする」という話を書いているのですが、Uberの「需給バランスに応じて値段が変わる」という仕組みも、生産性向上に非常に役立つ仕組みだと思ってるんです。

高橋 ありがとうございます。デマンドをすぐにドライバーに知らせることで、ドライバーと乗客のマッチングがしやすくなっているのも、生産性の向上と言えると思います。だからUberの実車率は既存の仕組みよりはるかに高くなるんです。

ちきりん 東京のタクシーも、オフピークのときは一斉に料金を半額にしたり、雨の日は料金を高めに設定すればいいんですよね。そうすればドライバーも時給が高いときに集中して働こうというマインドになって、タクシーが全然つかまらない雨の日には走る車が増えるから乗客にもメリットが大きい。

高橋 今までは家でテレビを見ていた人が、「今日は雨が降っていてデマンドが多いから、ひと仕事するか」と外に出るようになったらいいですよね。現在、東京では一般の方によるライドシェアはやっていないので、実現できていませんが……。

ちきりん ほんとに早く実現してほしいです!

シェアリングエコノミーは労働者の生産性も上げる

ちきりん そういえば、フードデリバリーサービスのUberEATSは一般の方から配達員をつのってるんですよね。

高橋 ありがたいことに、サービス開始直後から1000人以上と、予想を大きく超える数の応募をいただいたんですよ。学生の方から60代の方まで、さまざまな方が希望してくださっています。

ちきりん この人手不足の時代に、すごい! 配送って人が足りなくて困ってる業界というイメージがあるんですが、なぜそんなたくさんの人が配送人として手を挙げてきたんだろ? すごい意外な人が応募して来たといった事例はありますか?

高橋 それでいうと、東京という土地柄なのか、アーティストや役者、芸人といった方がリピートして配達してくださることが多くて、驚いてますね。

ちきりん えー、アーティストが配送してくれるんですか? それは想定してませんでした。そうか、駆け出しのアーティストや役者さんで、いつ仕事が入ってもすぐに受けたい、だからコンビニやファミレスなど、最初からがっつりシフトの組まれるバイトはできない。でも空き時間自体はたっぷりある。そういう空き時間にだけできるバイトならやりたいという人が、東京にはかなりの数、いるんですね。

高橋 あと、これも日本ならではだと思うんですが、みなさん、とても工夫して取り組んでくださるんですよ。我々からも「こういうことをするとお店やユーザーに喜ばれますよ」というレコメンドはするのですが、自分なりの取り組みをされている方が多くて。この前、僕がUberEATSで食事を頼んだら、除菌スプレーで手をキレイにしてから食事を渡してくださった方がいました。

ちきりん めっちゃレベル高いですね。Uberだとレビューによって個別に市場から評価されるから、働く側のやる気を大幅に高めるんだ!

高橋 その側面はかなりありますね。ちなみに、海外でライドシェアリングサービスである「uberX」のドライバーにアンケートをとると、1週間のドライブ時間が10時間以下のドライバーが50%以上なんですよ。

ちきりん 1日のうちせいぜい1~2時間だけ働くってことですね。

高橋 しかも、毎週のドライブ時間を、週によって大幅に変動している方が多いんです。たとえば「今週は10時間、来週は少し頑張って20時間、再来週はお休み」という感じですね。自分のスケジュールに合わせた働き方を、誰の承認も得ずにできるのは、Uberの強みだと思います。

「毎週来い」がなくなれば、人手不足は解消できる

ちきりん そういう、労働者の生産性を上げる試みがUber以外のバイトでも広がったらいいなと思うんです。たとえば東京には、過去に1年くらいコンビニで働いてたけど、今はもう止めてるって人、たくさんいるでしょ。そういうコンビニバイト経験がある人が登録しておくと、急なバイトが必要になったコンビニから「今日の3時から7時だけ働ける人いませんか?」というメッセージが一斉送信されて、希望者がそれに応じるというようなシステム。
 大学生で1年と2年のときはコンビニでバイトしてたけど、就活が始まったのでバイトは止めた。でも今日はちょっと時間があって、しかも金欠。みたいな人だと「おっ、今日は4時間だけ働いてみるか」って思える。居酒屋やファミレスなんかも同じで、登録する人は過去にどういう業態でバイト経験があるか、登録しておく、みたいなサービス。

高橋 おお、いいですね。

ちきりん でしょう? 「毎週来い」と言われると働けない人でも、ピークタイムだけ、希望の日だけ、空いてる時間だけサクサク働くことができるなら、働ける人はもっと多いんじゃないかな。今、人手不足でバイトを集めるの、どこのお店も本当に苦労してますけど、もう、週に20時間働ける人を探すんじゃなくて、5時間働ける人を4人、「明日働ける人いますか!?」みたいに調達することにすればいい。ヒマな時間はバイトを抱える必要もないし。

高橋 たしかに。ストックで抱えてしまうと、オフピークのときに人員が余ってしまうという問題もありますしね。うまくマッチングができるようになると、働き方、供給のフレキシビリティにつながると思います。

ちきりん いま「すごい人手不足だ」と言われているけれど、むしろ「働いてもいいんだけど、自分の都合に合わせてフレキシブルに働く時間を決められない環境では働けません」って人が増えてるのも、その理由の1つじゃないかと思います。

高橋 本当にそう思いますね。既存の働き方が、いま働きたい人のライフスタイルにうまく合致していないんです。それが「人手不足」という形で見えてしまうのでしょう。

ちきりん 変化してる働く側のニーズに、雇う側の「従来通りの雇い方」がマッチしなくなってるんです。UberEATSだって、今まではそれぞれの店が個別で確保していた配達員を、エリアでシェアしようぜという発想ですよね?

高橋 そうなんです。今回UberEATSを導入したことで、初めてデリバリーを始めてくださったお店も多いんです。お店が忙しい時間とデリバリーのピークが重なりますから、これまでは人員をさけなかったんですよね。

ちきりん たしかに飲食店は忙しい時間が限られてるから大変ですね。反対に、そういう時間だけ2時間ほど働いて、効率よく稼ぎたい人もいる。おもしろいです。
 あと、デリバリーの生産性については私もひとりの消費者としていろいろと不満があるんです。Amazonとかも、「一緒に届ける」というオプションを選んでいるのに複数の商品をバラバラに配達してきたりする。私はそんな急いでないのに、何度も受取り対応をしたり段ボールを開けたりするのが本当に面倒。注文は思い立ったときにいつでもポチれて、受取りは週に1回、まとめて届くようになればユーザーもデリバリーする側も生産性が上がってとてもハッピーなのに……とよく考えます。これからもネット通販やデリバリーはますます増えるので、配送システムについて生産性を上げていくことは社会全体としてとても大事だと思います。

※この対談は全3回の連載です。 【第1回】 【第2回】 【第3回】

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    ちきりん

    関西出身。バブル期に証券会社に就職。その後、米国での大学院留学、外資系企業勤務を経て2011年から文筆活動に専念。 2005年開設の社会派ブログ「Chikirinの日記」は、日本有数のアクセスと読者数を誇る。 シリーズ累計23万部のベストセラー『自分のアタマで考えよう』『マーケット感覚を身につけよう』(ダイヤモンド社)、『「自分メディア」はこう作る! 』(文藝春秋)など著書多数。

     


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