契約では、何を委任するのか?

 財産管理等委任契約の内容は、財産管理(預貯金の管理、税金や公共料金、医療費等の支払い手続き等)が主体で療養看護も含みます。開始する時期や内容は、契約当事者間で自由に決めることができます。財産管理等委任契約は、特に次のような場合に有益です。

[1]急病による入院期間中の対応

 特に一人暮しの人が急病で入院をしたり、病気での療養期間が長引いたりした場合に、本人に代わって財産管理を行ないます。

[2]日常生活の金銭管理の代行

 預貯金を管理して、税金や公共料金、医療費等の支払い手続等を行ないます。療養看護については、定期的な本人安否・健康状態の確認、医療や介護に関する契約や手続き等になります。 

財産管理等委任契約で注意すべき点はとは?

 財産管理等委任契約で注意すべき点は二つあります。一つは、弁護士を契約の受任者とすること。もう一つは、公正証書での作成は義務づけられてはいませんが、契約書は公正証書で作成することが望ましい点です。

 財産管理等委任契約は任意後見契約とは異なり、「任意後見契約に関する法律」のような法律はなく、根拠法は民法のみです。つまり、民法上の委任契約に過ぎません。

 財産管理等委任契約の内容は、自分の財産の管理やその他の生活上の事務の全部または一部について、代理権を与える人を選んで具体的な管理内容を決めて委任する契約ですので、「法律事務」に該当します。法律事務を弁護士以外の人が行なうと、非弁護士の法律事務の取扱い等を禁じた弁護士法第72条に抵触することになります。

 また、財産管理等委任契約は、任意後見契約とは異なり、公正証書での作成が法律で義務づけられておらず、後見登記もされません。しかし、契約書の安全性を高めるためには、公正証書での作成が望まれます。

 さらに、任意後見監督人のような公的監督者がいないために、受任者が契約どおりに業務を遂行しているかどうかのチェックは、受任者から委任者への報告によります。この点からも信頼できる第三者の弁護士が契約の受任者となることが妥当です。