マイナスの感情を無理に抑え込まない

私も3人きょうだいですが、勉強ができる姉と知的障害を持つ弟の間にはさまれ、母にも祖母にもあまり可愛がられず育ったため、Nさんの気持ちはよくわかります。

私はいつも、介護のつらさや苦しみについての相談を受けると「その感情を決して否定しないでください」と伝えます。

心理学者スティーブン・ギリガンの言葉に、「すべての自分を招き入れる」というものがあります。怒る自分、悲しむ自分、いらだつ自分──そんなマイナスの感情を無理に抑え込もうとせず、まずは認める。
ネガティブな部分も否定せずに、心の中に居場所をつくってあげるのです。

私も祖母を介護中、とてもイライラして思わず怒鳴りつけてしまったことがありました。

大人げない自分に落ち込み、恩師に相談すると、
「よかったね。イライラした感情が爆発して表に出せたんだから」
と意外な返事が返ってきたのです。

びっくりしていると続けてたずねられました。
「もし、爆発していなかったら、どうなっていたと思う?」

私はゾッとしました。
もしかしたら祖母に暴力をふるっていたかもしれない。
あるいは、自分で自分を傷つけてしまったかもしれない。
それぐらい強い怒りを抑えこんでいたことに気づきました。