23時から翌朝8時までの 夜型勤務の導入

 そしてふたつめの「営業時間を夜間にする」という方法。土日営業とくらべるとやや難易度が高くなるが、これも非常に高い効果が期待できる。

 理由はシンプル。夜のほうがエアコン使用による電力需要が圧倒的に少ないからだ。

 夏の電気需要のピークは気温が上がって暑くなる日中だ。もちろん、夜も熱帯夜で寝苦しい日が多いだろう。しかし、太陽が照りつける昼日中に比べれば需要はその比ではない。

 ならば始業時刻を思い切ってずっと後ろにずらしてしまおう、というわけだ。

 たとえば電力需要が下がっている夜の23時を始業時間にして、翌朝の8時までを就業時間にする。これなら通常に電車で帰宅できるから、深夜帰宅の交通費も必要ない。

 この夏だけ、就業時間を昼夜ひっくり返してしまうのだ。もちろん日中、その企業では一切の電気を使用しない。そうすることで昼間の需要ピークを大幅に抑制するのである。

 ただしこの「夜間営業」対策、現実問題として、営業職などのオフィスワーカーには難しいだろう。

 この対策を導入できるのは、オフィスではなく工場だ。

 そこで夏場だけ、各企業は自社の工場を、昼間閉めて夜間営業にしてはどうだろう。

 業務形態を考えても工場のほうが、ライン稼動もエアコンの運転も「いっせいのせ!」でやりやすい。また営業をはじめとした他社の人との交渉事が多いオフィスワークと違って、工場での業務は時間的な制約が少ないというメリットもある。

 ひとつ考えられるリスクは深夜割増手当の増加だ。 

 だが契約の種類によっては、夜間(とくに深夜)の電気代は、昼間に比べるとかなり安くなる。多少人件費が上がっても、その分電気代など下がるコストもある。節電効果を第一に考えるなら、深夜割増手当などのコストは、電力料金のコスト削減効果と併せて考えれば、それほどのマイナスにはならないだろう。

 実際に、日本経団連は4月20日、工場の稼働などを電力消費の多い昼間から夜間にシフトさせるため、労働基準法で定められている深夜割増手当を抑制するなどの規制緩和を求める要望案をまとめた。産業界がまとまって企業の節電を後押しする動きも出てきているのだ。  昼間休んでも影響の少ない工場を夜間営業にする。これを業界ごとにまとまって、足並みを揃えて実施すれば、かなり〝効く〟対策になるはずだ。