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何でも「想定外」と言えばそれで済むのか?
大震災を機に“コンティンジェンシープラン”を考えよ

大来 俊
2011年5月6日
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 東日本巨大地震が起こした津波や原発事故による被害は、いまだに収束の見通しが立たない状況だ。この未曾有の現状に対する説明を求められ、多くの専門家が異口同音に口にしている言葉がある。「想定外」という言葉である。これに対し、「想定外とは言語道断」「リスク分析が甘すぎる」などと批判が集中している。

 想定できなかった原因は色々あるだろうが、その1つは「問題は起きない」と思い込んでしまったことではないか。そのため思考停止に陥り、実際に起きたときの対策が後手に回ってしまった。

 想定するためには、どんな完璧な対策を打ったとしても、常に「問題は起こり得る」と考え、問題が起きたときの被害を最小限に食い止めるための対策を、あらかじめ用意しておくという発想が必要である。この対策は専門用語で「コンティンジェンシープラン」と呼ばれ、これを徹底的に考え抜くことこそが、想定外を想定内にする決定打となる。

 ところで、そもそもこの横文字の概念は欧米由来のものなのだろうか。論理的思考に関する数多くの著書があり、リスク分析にも詳しい飯久保廣嗣氏は、「実はそうではなく、日本にはもともとこうした発想はある」と話す。「最たるものが『泥縄の教訓』。泥棒に入られてしまうことを想定し、あらかじめ縛り付けるための縄をなうという発想は、まさにコンティンジェンシープランそのものであり、先達の智恵として伝承されてきた」(飯久氏)。

 しかし、日本が高度成長期に入り、問題が起こってから対応しても、何とか克服できるだけの体力や勢いが国や企業に備わったために、その智恵は軽視される傾向が出てきた。「この驕りがあり、“うちには泥棒は入らない”と思い違いをしたのではないか。その結果、本来想定しなければならないリスクを想定しない風潮が生まれ、バブル後も残ってしまった」と飯久保氏は言う。

 今必要なことは、原点に返り、家の塀を高くしたり、頑丈な鍵を設けたりしたとしても、「泥棒は入り得る」と考えて、予め縄をなっておくことだ。原発事故の収束に向けた工程表が発表されたが、これに対してもその作業が起こすかもしれない問題を想定して、コンティンジェンシープランを考えておくことが必要だ。こうして「問題は起こり得る」ことを常に意識する。そうすれば、思考は「停止」せずにとめどなく「展開」し、対策も緻密に打てるようになる。

 ただし、コンティンジェンシープランだけでは充分ではない。この問題が発生した「後」の対策に加えて、問題が発生する「前」にそれを未然に防ぐ対策、つまり「予防対策」も重要である。「江戸の火事に例えれば、予防対策は火の用心を呼びかける“夜回り”であり、コンティンジェンシープランは“火消し”。この2つをペアで考えることが、問題を想定内にして対策を打つための鍵となる」(飯久保氏)。

 こうして、先人の智恵である“夜回り”と“火消し”を思考プロセスとしてまとめ、体系的に発想することが、ヌケモレのない対策を打つことにつながる。震災を機に、このことを多くの日本人が心がけるべきだ。

(大来 俊)


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