御社の「商品価値」はなぜちっともお客に響かないのか?ビジネスパーソンは、自分たちが製造・販売している商品の価値をよくわかっているつもりでいる。しかし残念なことに、自社の商品価値をわかっている人たちはあまりいない

自社商品の価値はどこにある?
答えに窮する企業関係者

 ビジネスパーソンは、日々、商品価値を顧客に提供することによってお金を稼いでいる。このことに異論のある者は、いないだろう。なのに、改めて「商品価値は(物理的に)どこにあるか?」と問われれば、ほとんどの者は答えに詰まることになる。

 つまり、ビジネスパーソンは、自らの「メシの種」である商品価値がどこにあるかという、ビジネスの基本中の基本になることすら、ちゃんと知らないのである。一般のビジネスパーソンだけが知らないのではない。経営者も知らないし、投資家も知らない。MBAホルダーも知らないし、コンサルタントも知らない。もっと言えば、経営学者や経済学者さえも知らない。

 物事の「本質」を見極めることは本当に難しい。ゆえに、世の中は、そうと意識していなくても「本質」から乖離して物事を考えがちになる。しかし、「本質」から乖離した考えは成果に繋がりにくい。よって、いくら優秀なビジネスパーソンがどんなに努力しようとも、「本質」から乖離している限り、成果を出しにくい。

 逆の言い方をすれば、世の中がそうであるからこそ、その中で「本質」に準じて物事を考えれば、ときに競合に比して驚異的な成果を出せるようになる。たとえば、筆者の古巣であるかつてのソニーがそうだ。ソニーは、「本質」に準じて物事を考える者を「出る杭」と呼び、あえて「出る杭」人材を求めることで、神話として語られるほどの急成長を遂げた。

 そして、「本質」に準じて物事を考える者がビジネスの勝者となることは、社会にとって歓迎すべきことだ。それは、社会が受け取る価値の増大を意味するからである。

 そうした強い思いを抱きつつ、筆者は長年にわたって経営コンサルティング活動を行い、その中で「出る杭」の育成をライフワークに位置付けてきた。しかし、筆者ごときがもがいてみても、すぐにどうなるものでもない。世の中は、相変わらず商品価値の「本質」に準じて商品価値そのものやビジネス、企業、経営などを考えることができていない。商品価値のありかすら知らないようでは、そう結論づけざるを得ない。

 筆者の研修で物事の「本質」を自力で見極める訓練を終えたビジネスパーソンは、口を揃えてこう言う。「私は、本質から乖離して物事を考えていました」と。企業の業種の違い、規模の大小、役職の高低、職種のいかんを問わずにだ。

 だから、「本質」に準じて物事を考えてもらうために、自らの「メシの種」である商品価値のありかを世に問うているわけである。この問いを皮切りにして、今回は筆者のコンサル経験を基に「商品価値」についての考え方の基本をお伝えしよう。